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【後編】STORES PdM MeetUP #1「フロントオフィスからお店の経営を支えるプロダクトマネジメントの裏側」文字起こしレポート

本記事はSTORES のプロダクトマネジメントの裏側について話すイベントに関する書きおこしの後編です。前編はこちらから。

登壇者紹介
進行
PX部門/HR本部/タレントアクイジショングループ マネジャー 向原 茉莉江

スピーカー
・CPO 井出 優太
・プロダクト部門 シニアプロダクトマネージャー 淺田 純史
・プロダクト部門/プロダクトマネジメント本部 シニアマネジャー 西岡 大揮

TAMを広げるコンパウンドプロダクト

向原:ありがとうございます。では、次は西岡さんにプロダクト連携に取り組んだお話について聞きたいと思います。

西岡:2023年の約1年取り組んだ予約システムとPOSレジを連携したプロダクトの話をしたいなと思っています。めでたく、今年の1月26日にリリースできました。
「STORES 予約」と「STORES レジ」を連携する話なのですが、元々「STORES 予約」と「STORES レジ」は別々のプロダクトでして、「STORES 予約」は「Coubic」という全く別の会社で作ってたものをブランドを変えて 「STORES 予約」にしたのですが、中身は今まで運営をしている予約システム「Coubic」のままでした。 予約枠を管理画面で入れて、お客さんが予約をするというシステムになっていたのですが、一方で「STORES レジ」は自社で作ったプロダクトで、iPadのPOSレジのアプリケーションになっています。今回この2つのプロダクトを連携させました。
コンパウンドプロダクトと言われる中で売上や店舗、顧客、従業員という重要なデータを1つ、キーにして、プロダクトとして価値を出すというところの裏側の話を今日はしたいと思っております。

連携のきっかけは、「STORES 予約」のために、より獲得できる領域、Total Addressable Marketを広げる戦略を検討する中で出てきたアイデアの1つでした。
マーケットを広げていきたいとなった時に「領域を広げるにあたって予約管理だけだと結構難しいよね」 という話はあったので、POSや、分析機能というところを広げていく為に連携をする必要があるのではないかという話の中でプロダクト間連携の話が始まっていきました。

これは、プレスリリースにもあるのですが、同じようなタイミングで美容院向けのサービスを強化しました。POS連携も開発前にすごいバチバチの仮説があったかというと、全然そんなことはなくて。美容院などの現地で決済するお店はレジ+予約の連携によるオペレーションが何となく楽になりそうとか、結構ふわっとしていて、1年前は「ほんとか?」みたいなところが僕も事業責任者に突っ込まれていたところだったりとかしていました。

その時に、プロダクトマネージャー(以下:PdM)としては事業者の方たちにインタビューをしたいと思うのですが、これから獲得する領域の事業者の方たちなので、既存のフィットネスやヨガなどの事業者の方たちには全然いないし、聞いたとしても別にPOSレジいらないと言われるので、どうやって美容院の方たちにアタックインタビューをするか、自分たちの持っている仮説を検証するかみたいなところをもがく1年でした。
具体的に取り組んだこととしては、むちゃくちゃ泥臭くて、社内の人へ「行ってる美容師さんでインタビューをさせて貰えそうな人を紹介してください」とSlackで募集したり、会社が恵比寿にあるので恵比寿の美容院にお店が閉まるぎりぎりぐらいに突撃してビラ配りに行ったり、僕自身も毎月新しい美容院にInstagramとかで調べて髪を切りに行き、店長さんに話を聞くみたいなことをやっていました。
実際やっていたビラ配りのビラの内容が「インタビューのお願い。新サービスを開発するために予約管理や決済システムの業務について教えていただける方を募集しています。1時間でAmazonギフト券1万円分」だったので、結構いけるっしょ!と思って2時間ほど配ってたのですが、全然連絡が来なくて。2時間ほど配り、ようやく1件、獲得できました。

僕達が考えてたアイデアを「どうですか?」と聞いたら、「こんなの全然いらない」と言われて心が折れて、これはちょっと止めようかとなりました。でも、そこで結構分かったこともあり、今思うとやってよかったなと思っています。

美容院に行った時に店長を指名して毎月髪を切ってたんですけど、「減る髪の毛、増える知識」、むちゃくちゃ詳しくなってくるんですよね。どういうプロダクトを使っているとか、POSレジはこういう運用をしていてどういう課題があるかとかが、回数を重ねることで美容師さんとも共通の言語で「こういう課題ですよね。分かります。」みたいな。
美容師さんですか?と聞かれるほど詳しくなり、解像度が上がっていくというのはとても感じていました。例えば、「STORES 決済」は使っていただいているのですが、逆にレジと予約に関してはパソコンで管理をしていて、あまり顧客情報などを連携せず、別々になっていたりとか、現金の時は他社さんのレジを使い、クレジットカードの時は「STORES 決済」を使い、予約管理も他社さんのシステムでパソコン使って…といった具合でフロント業務が結構煩雑になっていることがわかってきました。

結果として、美容業界の言語や、競合他社の課題の理解が深まったりとか、想像してなかった刺さるポイント、逆に僕たちの強みになりそうなところが見つかりました。そして、何よりもPdMにとっていちばん重要だなと思うのは、基本的にはそのPdMがする意思決定は不確実性が高い状況での意思決定が多いかなと思うのですが、やはり現場をいちばん知ってるとか、美容院のことが詳しいとか、この課題があるということに自信を持って話せるところは、自分たちの作るプロダクトに自信が持てますし、PdM自身がこれでいけると自信が持てることがすごく重要かなと思っていて、そういうものを獲得できたかなと思ってます。

実は、開発前に、実際に開発する時やリリースする時のことをイメージしてプレスリリースを先に書くという、Amazonでされていると言われる有名な”妄想のプレスリリース”をやって、基本的にこういうものを目掛けてプロダクトを作っていくということをしていきました。
あとは、TAMを広げるコンパウンドプロダクトの戦略と、1人のオーナーさんの課題とか、価値仮説の検証と、あるべき理想の言語化を何回もまわしていました。

STORES のPdMに求められる役割と機会について、淺田さんからはプラットフォームの話があったので、僕はどちらかというと、ビジネス側とかのPdMとして話します。

顧客課題や顧客現場に執着をし、仮説検証行う、分かったことを通じて、プロダクトのあるべき姿を言語化し、ステークホルダーを導く

西岡:僕自身昨年の役割としては、先程の予約システムとPOSレジ連携のプロダクトのオーナーとしてプロダクトの要件定義と、サロン業界へのGo To Marketというプロジェクトの責任者もしていていました。後者のプロジェクトではセールスや、サクセスチームへの機能理解促進だったり、マーケティングのLPやセールスメッセージの検討だったり、プライシング検討もやっていました。
顧客課題や顧客現場へ執着をして、仮説検証行っていくというところと、それで分かったことを通じて、プロダクトのあるべき姿を言語化し、ステークホルダーを導いていくという役割がPdMにとって本質的に重要なところかなと思っています。

STORES での機会としては、戦略から開発というのをPdMが自発的に行える環境で、役割が分かれていない部分もあります。
僕自身、 STORES で1度もこのプロダクト作れみたいな感じで言われたことはなく、基本的には自分で考えて課題を特定し、あるべき姿を描いていくというところを一気通貫でやっています。
あとは、フェーズの違う多様なプロダクトマネジメントというところで、先ほど井出さんも言ってたようにプロダクトが7つあって、今後新しく複数作るみたいな話もあるので、新規のプロダクトを担当する機会もあれば、成長段階、グロース段階の大規模な開発をしていくこともあったりしますし、プラットフォーム的なことの開発もします。PdMとしては、かなり多種多様な機会があるのかなと思っています。

TAMを広げるコンパウンドプロダクトのまとめ

西岡:複数プロダクトがあると連携をしたくなると思うんですよね。特に最近コンパウンドスタートアップという風に流行っていたりはするので。とはいえ、やはり狙いが重要だなと思っていて、事業戦略、TAMを広げるとか、その中でも、顧客の解くべき課題は何なのかをPdMとしてしっかり軸にした中でプロダクトの価値を見つけるということが重要なんじゃないかなと思っています。

トークセッション

STORES のプロダクトマネージャーの面白さ・難しさ

向原:ここからは質問にみなさんで答えていただくトークセッションにできればと思います。まず、最初の質問ですが、STORES のPdMの面白さ・難しさは何だと思いますか?

西岡:面白さは、やはりPdMで「なんでもやりたい」みたいな人とかはすごい面白い環境なのかなと思っています。戦略作りもそうだし、プロダクトの方向性や優先度をしっかり考えていくところもだし、僕自身もPdMの採用や組織作りをしながら、開発チームを持って一緒にエンジニアやデザイナーと開発をしていたりもするので、そこの要件定義含めたプロダクトを一緒に作っていくという部分もすごい好きです。そういったところを楽しめるのは特徴の1つだと思っています。僕自身もそこがいいなと思っているし、できるだけ組織が大きくなってもキープする方法みたいなところを模索したいなと思っています。

難しさは、ステークホルダーが多くなってきていたりとか、プロダクト間の連携が進んでいたりするので、結局PdMがどういったものを作りたいのかをしっかり発信をしたり、やはりWill(何をすべきなのか)を決める必要性はあることです。、逆に上司や周りから「これをやりなさい」と言われる環境ではないので、PdMがある程度の責任を持って決めれる環境があるからこそ、僕自身もすごく自分自身に健全な疑念を抱きながら「本当にこれでいけるんだっけ?」と自己否定を繰り返しながら、それでも、意思を持っていけるように現場の情報を取っていくみたいなところを先ほど話したプロジェクトの中でもやっていたという感じですかね。

向原:淺田さんはどうですか?

淺田:よくPdMの面談とかをする時にも、どういう人にきてほしいかとかをお話しますが、本当に答えを持ってやっている人というのがこの会社にいるわけではないんですよね。CEOの佐藤さんとの1on1でも、佐藤さん自身も、「僕に答えはないから、事業者の方たちに聞かなきゃね。」とよく言うのですが、やっぱり答えを持ってる人がいて、その答えに向かって指示されてやっていくわけではありません。そこは難しさにはなるけども、逆に「こういうのをやるべき」「こういうのやりたい」という情熱だったり、意思がある人からすると、そこに向かってみんながサポートする、支援していく、というとこだと思ってるので、新しいことにチャレンジしたいとか、答えがないところを自分で作っていきたいという人にとっては楽しい会社なんじゃないかなと思いますね。

開発チーム/ビジネスチームの関わりはどのようになっているか

淺田:私が見ているプロダクトで言うと、スクラムの形を取っています。特にまだ新しいプロダクトになってくると、計画の場に営業メンバーだったり、カスタマーサクセスのメンバーも参加していて、顧客獲得のために「こういう要望来てるからこういうの開発してほしい」とか、今契約している事業者の方たちからくる要望を2週間に1回ステークホルダーが全員いる計画の場で、実際にこういう順番で作っていこうという合意形成を取っていくみたいなことをしているので、ビジネスメンバーからすると、開発のメンバーが何をしてくれてるとかが分かり易いし、開発メンバーも何故この順番でやって行かなければいけないのかという背景を分かった上でちゃんと開発していけるのは、すごく良い関係なんじゃないかなと思っています。

また、計画だけではなくて、レビューも行っています。実際にレビューは動くものを開発のメンバーがデモするのですが、それ見て「これだったら、事業者の方たちにも喜んでもらえそう」という自信を持って営業が提案に行ったり、カスタマーサクセスがそれを持って事業者の方たちへまた案内しに行く、みたいなことができているので、非常にいい関係値の中で開発ができてるんじゃないかなと思っています。

プロダクトマネージャーの仕事とかに興味があるが、そこに接点ある仕事がないというようなエンジニアに対してどういうアドバイスがあるか

西岡:PdMは会社によって役割が結構違うので、企画をして要求を整理してプロダクトを作るというプロセスの中で誰がどこをやってるか、だけという話。なので、興味があるエンジニアに対してどういうアドバイスかで言うと、例えば作るところだけではなくて、要件を決めるところとかでデザイナーと一緒に要件を決めるところに参加をする、PdMの仕事をちょっと減らしていくみたいな部分だったり、あとはもう少しお客さんのことを知りたいとかであれば、お客さんのところに同行するビジネスチームと一緒に同行したり、この機能を求めてるお客さんの課題深堀のインタビューを一緒に行くみたいなところで、少しずつ領域が広がっていくのかなという風なイメージを持っていますね。

AI/LLM普及によってフロントオフィスはどう変わるか

井出:本当にすごく進化していて、ロボットにお願いしたら、全部やってくれるみたいなデモとかを出していた会社もあるのですが、そういうものが本当に数年後とかには普及していくのかなとかを考えると、お店も明らかにちょっとしたロボットみたいのは増えてはいるけど、そういうのとは次元が違うレベルでテクノロジーが入り込んでくるフェーズに入っていくと思います。
日本は人口が減っていくという中で、人がやって価値を出していくところと、自動化したりロボットにやらせていくとか、そういうものをデジタルなツールで、どういう割合でやっていくのか、みたいなことを考えながら、結局データが集まらないと価値提供していくこともできないので、今は足元ちゃんとデータを繋ぐこととか、新しいデータが取れるようになっていくようなプロダクトをもっと増やすとかをやってはいるのですが、大きい流れの中でどういう方向に行くんだろうみたいなことを見据えながら取り組んでいます。

明らかにそういう方向性は社会全体であると思うので、目の前の事業者の方たちの課題を解いていくところと、大きい流れの中には乗っていく、きちんと見極めながらやっていくのが、あまり規制もないお店のフロントオフィスの中で、自分たちがどういうものをやっていくんだという意思をきちんと持ってやっていくのが面白いとは思います。

向原:AI/LLM普及によってフロントオフィスはどう変わるか、淺田さんはどうお考えですか?

淺田:お客さんと接点持つ業務のところに対して我々がどう業務支援できるか、ということだと思っているのですが、多分お客さんとのコミュニケーションを取っていくことにおいても、力を入れたいところと、力を入れなくてもいいな、というところは正直あると思っています。
しかし、今は意外と力を入れなくてもいいところに時間を取られてしまっているんじゃないかなと思っていて、 例えば、電話の予約とかを電話で受けるのは、別に人じゃなくてもできるところなのに人がやっていたりとか。そこって別に難しいコミュニケーションが発生するわけではないところではあるから、そこに時間使いたくないのに時間がかかってるというのはあったりとかすると思うので、そういうところはどんどんAIに任せていけばいいのかなと。

西岡:AI/LLMの登場で初期に言われていたのが、ホワイトカラーの仕事がなくなりそうみたいな。
コンサルティングだったり、金融系の仕事みたいなデスクワークをしている人たちの仕事がなくなりそうという話があった時に、僕は、「多分それはそうだな」という風には思ってはいて。
ただ、一方で、僕が今「STORES 予約」というプロダクトでフィットネスのサロンのオーナーさんや、トレーナーさんとかに対してサービスを提供していますが、接客の部分だったり、サービス業を営んでる人達の仕事は多分なくならない。どちらかというと、より強化がされるというイメージがすごく強くて、無駄な時間が減るというのはもちろん、もっとAIやLLMによってその日の分析、顧客の好き嫌いとかがより正確に分かってくるとか「何故この人がこう書いてくれたのか」「何故お店にリピートしてくれてるのか」みたいなところも、データの分析で分かってきたりするんじゃないかなと。
あとは、自分に得意なものがある人。美容院だったら、自分が得意なメニューとかも今は経験と勘でやってる部分が、もう少しデータが溜まることによってでそこを分析されていくことによって、より自分たちの得意な領域に特化しやすくなり、それがサービスの強化に繋がるんじゃないかなという仮説があって、そういった部分で僕たちのプロダクト自身も、まだまだ進化ができるなと感じます。

(書きおこしここまで)

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