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「マネジメント女性比率40%」。STORES が実現を目指す多様性とそれまでの道のり

STORES は、多様な社員が「らしさ」や「得意なこと」を活かすことで、顧客に価値を提供し続ける組織を目指し、2030年にマネジメントグループにおける女性比率を40%にすることを宣言しました。この背景には、どのような道のりと思いがあったのでしょうか。このプロジェクトに取り組むVP of People Experienceの佐俣奈緒子さんとCTOの藤村大介さんにお話を聞きました。

注釈1)本記事及び本施策での女性・男性とは本人の性自認に基づいて定義されるものとします。
注釈2)本記事における「マネジメントグループ」とは、STORES における管理職のことを示します。「マネジメントグループ」にはマネジャーから社内取締役まで含まれます。
注釈3)本施策の推進にあたっては、当社の雇用管理区分で女性従業員比率が4割を超えない役職・職種に限って、より積極的な情報提供など(いわゆるポジティブ・アクション)を行います。任用・採用にあたっての基準は男女とも共通の基準で運用をする予定です

聞き手:高橋 真寿美(PX 部門カルチャー本部)

異なる会社が集まってできた
STORES と多様性

──これまでの STORES では、ダイバーシティ、つまり多様であることはどのように考えられてきたのでしょうか。

佐:STORES は設立当初から「Just for Fun」をミッションに掲げてきました。これは、STORES を使ってくださるオーナーさんの楽しみを支えるという意味であると同時に、オーナーさんにサービスを提供する私たちのあり方を定義するものでもあります。オーナーさんは、住むところ、職種、性別なども多様な存在。その多様なオーナーさんを支える私たちも、もちろん多様でありたいと考えてきました。

藤:オーナーさんは、こだわりを持ってお商売をしています。そのこだわりが全員同じということはないですからね。そんなオーナーさんを尊敬し、プロダクトを提供する僕らも、もちろんそうである必要があります。そもそも、会社の始まりも、多様な仲間が集まってできていますし。

佐:STORES は、異なる会社が経営統合してできたのが始まりでした。なので、自ずとお互いの違いを理解し、尊敬し合い、強みを活かし合いながら大きくなる必要がありました。さらにそこにもう2社が加わった歴史を考えると、違いを認め、活かす文化はあったはずです。

──異なる会社が次々仲間入りしながら大きくなってきたのはそう簡単なことではなかったですよね。

佐:それぞれの会社に歴史があり、こだわりがあり、事業があり、強みがありました。それを理解して学び合うのは確かに簡単ではありませんでした。けれど、同じゴールに向かうという共通点があるおかげで進んでこれたのだと思います。

藤:僕はすでに2社が集まって会社になった頃に入社し、その後も新たな会社の仲間入りが続きました。そんな状況でCTOになったので、それぞれの異なるプレイスタイルを活かすのは自然なことでした。僕自身、均質化が難しかった人間で、そういう葛藤を抱えながら生きてきたので、多様なこだわりを活かし合いたかったのです。

佐:STORES のメンバーもそうだと思います。それぞれ違っていて、自分なりのものさしやこだわりを持っている人が集まっている。それは、そういう人を仲間にしたいと私たちが考えていたからです。チームとは、自分とは違うひとたちとはたらくもの。たとえば、STORES を始める時に経営陣が集まった時、お互い得意なことを活かして役割分担をしたんです。全員がそれぞれの会社の社長だったけれど、ビジョンとファイナンス、プロダクト、組織文化などのそれぞれ違う強みを持っていました。

──多様なはたらき方を支える制度の導入なども行われてきました。

佐:たとえば「WORK LOCAL」は、全国どこからでもはたらける制度です。海が近い場所、山深い場所、寒い場所、暖かい場所など、多様な場所からはたらくことで、多様なお商売の形を理解することができますし、さまざまなライフステージやはたらき方に寄り添うことができます。

藤:都市部ではたらいていたら見えない顧客像や、作れないプロダクトがありますからね。

佐:また、当初「Fun for Kids」という名前だった子育て支援の制度を「Fun for Family」と改め、適応できる範囲を広げています。

──どのようなきっかけで変更したのでしょうか?

佐:社内からの声です。子供を持つ持たないにかかわらず、さまざまな形の家族と仕事の両立ができるようにしてほしいというフィードバックをもらい、「いいね、広げようよ」とすぐに決まりました。多様なメンバーがいることで、できることが広がっていくというのは STORES にもともとあった文化です。

藤:得意なことが異なる人同士が集まった方がいい。これは、ずっと前からこの会社の風潮でした。僕だって万能型のエンジニアではありませんから。採用をする時には、「僕らが持っていないものを持っているか」を重視してきました。

課題の発見と、これまでできていなかったこと

──一方で、これまで実現できていなかったことがあるということですよね。

佐:多様でありたいという思いはありましたし、さまざまな能力やできることに違いをもったメンバーを採用してきました。一方で、「専門性やスキルの多様性」の拡大に対して、「属性の多様性」が軽視されていたことは否めず、特に性別の多様性が限定的になっていました。STORES の採用人数の男女比率は半々ではありません。現時点では、採用母集団比率のギャップがこの主な原因であると分析しています。属性の多様性を重視しなかった結果、メンバーの男女比率も、マネジャーの男女比率も採用市場の男女比率に引っ張られる形になってしまいました。

──この課題に気づいたのは、いつだったのでしょうか。

佐:今年、塚原が取締役を退任しましたが、もともと取締役の半数が女性であることに甘えていた部分がありました。一昨年、塚原が育休に入り、並行して経営陣が増えていくと、そのジェンダーバランスが明らかに偏っていることに改めて気づかされました。さらに、社内の状況を数字で可視化してみたことで、課題が明らかになったのです。

藤:体感としても、かなりバランスが悪いと感じる場面が増えていたと思います。マネジャーだけが集まる会議や、シニアマネジャーだけが集まる会議が開催されるようになったことで、特にそれを感じるようになっていました。意思決定するポジションは増えたのに、女性の意思決定者が増えていない。

佐:現状を踏まえてシミュレーションしたことで、このまま何もしなければ来年、再来年がどうなるかもわかってきました。今取り組まなければ、取り返しのつかない状態になってしまうと思いました。

藤:エンジニア業界の女性比率も、バランスが悪い状態が10年くらい続いていました。依然として課題があることには変わりませんが、例えばRubyだとRails Girlsという女性向けのワークショップが開催されるなどの成果もあってか、少しずつバランスが改善しているように思えます。 真摯に課題に取り組むことで、改善できるはずです。

マネジメントの女性比率40%への道のり

──目標に定めた数字「 マネジメントグループにおける女性比率40%」は、どのようにして決まったのでしょうか。

佐:そもそも、50%を目指すべきなのではないのかという議論がありました。しかし、STORES の正社員のうちおよそ30%がソフトウェアエンジニアです。一般的なソフトウェアエンジニアの採用母集団における男女比率を考えると、50%を達成するにはあまりにも時間がかかると考え、最終的に2030年40%という目標を目指すことに決めました。

──さらに、あえてこの目標を公表したのはなぜなのでしょうか。

藤:まず、STORES に変えていく意志があるということを知ってもらうのが大事だと考えました。また、それを宣言することで採用が進んだり、社内のメンバーがさらにそれに取り組んでくれるのではないかという期待も少しありましたね。

佐:もちろん、具体的な数字を公表するかどうか、かなり悩みました。あくまで内部指標とするという選択肢もありましたが、社外にも知ってもらい、はたらきかけなければ到達できない目標だと考え、この数字を社外にもお知らせすることにしました。また、日本のスタートアップにおいてはまだまだ取り組みが多くはないテーマであるため、私たちが姿勢を示すことにも意味があるのではないかと考えました。
──そのために、何から始めるのでしょうか?

佐:ひとつ目のアクションは、マネジメントグループへの新規任用者の女性比率を50%にすることです。これまで見えないバリアになっていた課題を徹底的に取り除くことで、本人にその意思を持ってもらえる環境をつくることが大切だと考えています。その上で、任用基準は変えずに、やりたいと思ってもらえる状況をつくっていきます。
ふたつ目のアクションは、新規採用者における女性比率をエンジニアで30%、それ以外の職種で50%とすることです。そのためにはまず、STORES の採用に応募してくれる母集団に女性を増やすことが必要です。このように目標を公にしたり、積極的に情報を公開していくことで多くの人に応募してもらえるようにはたらきかけたりしていきます。

藤:バリアがなければ、今のようなバランスにはなっていなかったはず。たとえば、同じ成果を出した男女の自己評価を比べると、女性のほうが自己評価が低くなりがちであるという傾向が見えてきています。

佐:この傾向を知ってるだけで、メンバーのキャリアを考えるときの問いかけの仕方が変わりますよね。

藤:特にエンジニアは時間がかかると予想していますが、腰を据えて取り組んでいきたいと思います。

多様性を実現する第一歩を踏み出す

──社内でこの取り組みをアナウンスして1週間が経ちました。社内の反応や、現在の気持ちに変化はありましたか?

藤:この取り組みを本格的に始めてから、性差によりキャリア形成に歴然とした差があるという事実を改めて認識し、愕然としました。学生の頃からこの問題に課題意識があったので、まずは取り組みを始められて良かったです。一方で、ダイバーシティを実現する施策としてまずは女性比率の向上に取り組む、という意思決定は、仕事とダイバーシティをとりまく多くの課題の中からひとつを選ぶ、という決断でもあり、これには葛藤もありました。歯がゆい思いもありますが、この課題をスタートとし、これからもさまざまなダイバーシティにまつわる課題に取り組んでいくつもりです。

佐:社内の反応としては、このアナウンスをしてから以前にも増してさまざまな声が集まってくるようになり、やはり始めてよかったなと感じています。「違和感があると思っていました」「ようやく前に進むんですね」という声をもらうたびに、もっと早くできなかったのかと反省すると同時に、気持ちが引き締まる思いです。私自身も、起業家の中でジェンダーマイノリティの立場を経験してきたので、STORES がその是正を実現し、次に続くような事例をつくりたいと思います。

デザイン:中間 彩乃
写真・文:出川 光


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