分析したデータがビジネスの視点を作る。heyのデータ分析のやりがい
heyのテクノロジー部門、データ本部でデータ分析を手がける末重 拓己(すえしげ・たくみ)さん。どんなデータ分析をしているのか、そしてそのこだわりは。聞き手に同じくデータ本部シニアマネージャーの西村 純(にしむら・じゅん)さんを迎えてお話を聞きました。
会計士からデータ分析の道へ
──今日はよろしくお願いします。まずは、末重さんのキャリアからお話をはじめましょうか。
僕のキャリアは、公認会計士からスタートしました。公認会計士として監査の仕事を2年半ほどしていたんです。その仕事の中でもっと財務データを監査に生かせないかと考えたことから、データ解析の大学院に入り直したのです。まだデータ解析が今ほど注目されていない、2015年くらいのことでした。それから博士号を取得し、不正会計のプロジェクトを専門に扱う会社を経て縁があってheyに入社しました。
──博士号を取っている方はなかなかいないですよね。なぜ、博士号まで取得しようとおもったのですか?
新卒で入った会社で、博士号を取得した人と一緒に働いていたんです。博士を取っていると仮説検証のプロセスや、その読み込みが深いなと感じていました。今後の長いキャリアを考えると、そうやってデータと向き合える方がいいなと思ったのです。
──なるほど。末重さんのデータ分析への姿勢が少し垣間見える気がします。
heyのデータ本部の仕事。オーダーと「自由研究」
──heyではどんな仕事をやっているのでしょうか。まず、データ分析をする対象は?
heyには4つのプロダクトがありますが、僕は STORES と STORES 決済 をメインで分析しています。僕がやっている分析は大きく二つに分けられます。ひとつはビジネスサイドが行った施策の効果検証や、リクエストされたデータの抽出です。こちらはタスクとして与えられるもので、基本的にビジネスサイドからのオーダーを聞いて、背景や目的に齟齬のない抽出をするのが大切です。もうひとつは、僕が自発的にテーマを設定する STORES に関わる分析で、僕は自由研究と呼んでいます。
──どんなものなのでしょうか。
時間がある時にビジネスサイドのオーダーとは直接関係がないけれど、追加分析したら面白そうな結果が出るかもしれないと思う課題をデータ分析してみるのです。こちらからビジネスサイドのヒントになりそうなデータ分析の結果を提供することで、施策につながることもあるのです。これだけ多くのオンラインショップのデータが集まっているところは珍しいので、なかなか面白い分析ができるんですよ。
──なるほど。それぞれの分析でこれまでに行ったものを教えてください。
ビジネスサイドからのオーダーで、 STORES でオンラインショップを開設した人が初売り上げを立てるまでに何が必要かを分析したのはわかりやすい例かもしれません。自由研究では、初売り上げがあったオーナーさん自身の傾向をさらに深掘りしてみました。
──なるほど。そこから新たに気付かされることも多そうですね。
そうなんです。また、データ分析以外のプロジェクトとして、会計の知識を生かして、社内用にお金の流れを簡単に追うことができる管理画面を作ったこともありました。
──会計のこともシステムのことも理解した上でシステムを作れるのは大きな強みですよね。自由研究のお話もすごく面白い。業務量がパンパンにならない範囲で、これからもどんどんやって欲しいです。
heyのいいところは、業務を超えてオーナーさんに「踏み込む」こと
──ここからはheyでデータ分析をすることについてお話を聞いてみたいと思います。入社してみて、heyの印象はいかがでしたか?
一番驚いたのは、オーナーさんのことが業務の範囲を超えて好きなこと。以前いた士業の世界は、自分のビジネスを持っているわけではないのでさばさばとした雰囲気であることが多いんです。heyにはオーナーさんのことが好きで、ひとつずつお店に足を運ぶという人が普通にいる。いい意味でオーナーさんに踏み込んでいくheyの文化をいいなと思っていました。
分析したデータがビジネスの視点をつくる
──heyでデータ分析をする時、難易度が高いのはどんなところですか?
STORESで言えば、オーナーさんの初売上の解像度をあげるところです。売上分析には、商品を出品するというオーナーさんの視点と、商品を購入するというお客さんの視点という両方の視点が必要です。けれど、heyとして直接アプローチできるのはオーナーさんまで。その先のお客さんには現状直接アプローチはできないので、データからお客さんの購買傾向や実務で活用できるような質の良いインサイトを出してあげるところが難易度が高いと思います。
──なるほど。
でも、これは難しい点である一方で、最も手応えを感じた分析でもありました。僕がheyに入った当初は、みんなオーナーさんのことが大好きだけど、その先のお客さんのことまでは関われないという考え方を持っている人が多かったように思います。けれど、このコロナ禍でオンラインショップの開設数が急激に伸びて状況が変わったのです。これまではネットで物を売ることに思い入れがあったり、ある程度やり方がわかっている人がネットショップを開設していたけれど、コロナ禍で準備もままならないままネットショップを開設して集客に苦しむオーナーさんが増えました。そこに、オーナーさんの売り上げをサポートするには、オーナーさんの先にいるお客さんにまで目を向けなければならないというデータをお渡しすることで、見えていなかった問題点に目が向けられるようになったのです。
──僕らが提供するデータがきっかけで、あらたな考え方が社内に生まれた嬉しい瞬間ですよね。
データを渡して終わりではなく、役立ててもらえるまでの工夫
──毎日の仕事でこだわっていることがあれば教えてください。
heyで働く上で、とするなら、結果の出し方です。データ分析は、出てきたデータを渡して終わってしまってはだめで、きちんとビジネスや施策につなげていただかなければいけない。けれど、その結果をちゃんと読み解いていただくというのは案外難しいことなんです。分析する側と結果を受け取る側のミスマッチが少なくなるようにドキュメンテーションをしっかりすること、必要な前提知識と一緒に伝えること、プロジェクトに関わる人が理解しやすいフォーマットを作ることを心がけています。
──確かに、きちんと役立てていただくためには、まず結果をきちんと受け取っていただくことが大切ですよね。
そうなんです。ビジネスサイドの方からは、やはり「分析結果がいっぱいありすぎて迷子になる」という声が時々聞かれます。これから、重要な分析結果をまとめたドキュメントを書くなどしてさらに工夫していきたいと思っています。
──末重さんのデータ分析だけではなく、仕事への向き合い方がよくわかるお話ですね。最後に、これからやってみたいことや、展望を教えてください。
オーダーされた分析はもちろんですが、ビジネスサイドの知見になるような結果を出せる自由研究にさらに力を入れたいと思っています。例えばheyが提供する複数のサービスをまたいだ分析をできたら面白そう、など分析したいことはまだまだたくさんあります。そのような分析が、ビジネスの起爆剤になるように、その打率をあげていきたいと思っています。
──これからも一緒にがんばっていきましょう!今日はありがとうございました。
(写真・文:出川 光)
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