大切なのは意思決定とプロトタイピング。「予約システムとひとつになったPOSレジ」の開発舞台裏
先日リリースされた「予約システム×POSレジ」を統合した新機能。その開発には複数のチームが参画しており、それならではの開発やコミュニケーションの壁が立ちはだかっていました。それを解決しながらリードしたのは、これまでにさまざまな開発現場で多様な技術を身につけてきた片桐 寛貴さん。これまでのキャリアや、新機能のリリースまでの舞台裏がどのようなものだったのかお話を伺いました。
幅広い技術を身につけながら積んできたキャリア
──まずはこれまでのキャリアからお話をお聞かせください。エンジニアを志したきっかけは何でしょうか?
子供の頃から機械をいじったりゲームをするのに興味があり、それを仕事にしてみたいと思っていました。その中でも、一番自分にできそうだと感じたエンジニアを目指すことに決め、専門学校に入りました。専門学校在学中からインターンを始め、その後受託開発の会社で経験を積みました。その後もさまざまな技術に触れてみようと、この頃からフロントエンドもバックエンドもどちらも経験しました。その後はヘルスケアのスマホアプリを運営する会社でサーバーサイド、Androidのモバイルアプリなど技術の幅を広げていきました。
──経験されている技術がかなり幅広いですね。
もともと色々な技術を使えるエンジニアを目指しており、それを意識して仕事を選んだり、転職したりしてきたのです。前職でも、Androidエンジニアをした後、自ら手を挙げてiOSエンジニアをやっていたほどです。
── STORES に転職されたのはどのような理由からなのでしょうか。
さらに新たなキャリアを開拓しようとこれまで経験していないジャンルの会社を探していました。また、自らがユーザー目線を持てる身近なサービスに携わりたいという思いも。その希望をお伝えして、エージェントが紹介してくれたのが STORES でした。
──入社の決め手はありますか?
体験入社です。実際のタスクをひとつやらせていただきました。その時のコミュニケーションや仕事の進め方が自分のはたらき方や雰囲気にとてもマッチしていると感じ、このチームならばはたらきやすそうだと思えました。
──入社当時は、 STORES 予約 のエンジニアをされていました。現在の仕事に至るまでの経緯を教えてください。
入社時は STORES 予約 のサーバーサイドエンジニアに配属されました。途中から、先日リリースされた新機能の礎になる、プラットフォームの基盤をつくるグループに配属されました。このプロジェクトは、社内で「maja(マヤ)」という名前で呼ばれています。その後、POSレジグループに異動となり、現在に至ります。
ネットショップと予約の情報を一元管理できる
「予約システム×POSレジ」の新機能
──片桐さんは、先日リリースされた「予約システムとひとつになったPOSレジ」に、その礎になる基盤づくりから関わっていらっしゃいます。あらためて、この「予約システム×POSレジ」はどのようなものなのでしょうか?
これまでの、 STORES レジ と STORES ネットショップ がつながっていることに加えて、 STORES 予約 に紐づく情報も STORES レジ で参照できるようになるサービスです。これにより、STORES レジ で、ネットショップ、オフライン店舗、予約を合わせた売上、顧客の管理をすることができます。
具体的には、 STORES 予約 で現地決済を選択した予約の支払いを STORES レジ で行ったり、STORES レジ で STORES 予約 の情報を参照したりできるようになります。また、お店で商品を購入した時に、何の予約で来たお客様なのかが把握でき、効率の良い接客やよりよいサービスにつなげることができます。
──予約と物販を両方行っているオーナーさんにとって、革新的なサービスになりそうですね。片桐さんは、この開発をリードされたとのこと。どのような経緯で開発を進めたのか教えてください。
「予約システム×POSレジ」の開発は、それぞれのプロダクトを連携させるために、その事業者や店舗などの単位を共通化するプロジェクト「maja」から始まりました。それぞれ異なる会社が開発してきたサービス群からなる STORES のプロダクトラインナップは、「事業者」「組織」「店舗」などの定義がそれぞれ異なっていたのです。プロダクト連携が前提の新機能を開発するには、その共通化が必要でした。
それを行うため「maja」が立ち上がり、私は STORES 予約 からそのチームに入りました。しかしそこには、コミュニケーションと開発、ふたつの問題があったのです。
コミュニケーションと開発。
複数チーム開発だから起きたふたつの問題
──それぞれ、どのように解決したのかお伺いしたいです。まず、コミュニケーションの問題とは。
まず前提としてお話ししておきたいのは、決してコミュニケーションに刺々しさや敵意はなかったということです。「maja」に関わるさまざまなチームのメンバーが、お互いにそれまで一度も話したことがなく、さらにリモート出社やお互いへの気遣いが裏目に出て、なかなか突っ込んだ話をすることができなかったこと、さらにお互いの設計思想の違いからコミュニケーションの問題が出てきてしまったのです。
──具体的にはどのような問題だったのでしょう。
「maja」のメンバーは、それまでプロダクト共通のIDを作る基盤を作っていた、いわばプロダクトの「裏側」を作ってきたメンバーが主となり構成されていました。「予約システム×POSレジ」を作るための単位の共通化をするためには、プロダクトそのものの開発を行っているチームと密にコミュニケーションを取る必要があります。しかし、両者は設計においての勘所や、大切にしているもの、熱量も異なっていたのです。そのため、設計やその裏にある思いなどが伝わらず壁ができてしまっていました。
また、複数のチームが一緒に開発を進めるため、チーム同士の垣根を取り払うのにも苦労しました。お互いに敵意はないとわかっていても、コミュニケーションコストを考えると内輪で解決してしまおうと考えるもの。それにより、さらにコミュニケーションを取りづらくなっていました。
──どのように解決したのでしょうか。
まず、この意識の差を埋めるため、積極的に「maja」チーム内で問題提起を行いました。自分がもといたプロダクト開発側の視点で思うことをどんどん問題提起し、それを解決する中で少しずつ設計思想のずれを埋めていきました。
また、チーム間で私が橋渡しとなれるように心を砕きました。できるだけお互いのチームの間に入り、情報のキャッチアップがお互いに行える状態になるまで、積極的にコミュニケーションをとりました。これにより、少しずつコミュニケーションが活発になり、気づけば私なしでも会話できる状態が生まれていました。
お互いの設計思想のずれを修正するため、再設計した箇所もありました。これまで積極的にドキュメンテーションが行われていなかったのを軌道修正し、あらためてその意義と必要性をわかりやすく説明したスライド資料をシニアマネジャーの方々が作ってくれました。こうして少しずつ共通のものを作ることで、その溝が埋まっていきました。
──開発の問題というのは、どのようなことだったのでしょうか。
それぞれのプロダクトで、「事業者」「組織」「店舗」などの定義が異なるため、「あちらを立てればこちらが立たない」といった状態でした。それぞれのプロダクトの肝要な条件をあきらめず、一貫した思想に基づいた設計を作り、かつ将来も破綻しない構造を考えるのが難しかったです。 STORES はこれからも長く続くプロダクトですから、突貫工事ではなく、あるべき姿の設計を定義し、それに細かい設計を足していく形で開発を進める必要もありました。
──これらはどのように解決を?
私がこれまでにさまざまな開発現場を経験してきたのが役に立ったと思います。「とりあえずやってみよう」の精神であえてラフに意見を出してみたり、他のチームのタスクでも遠慮せずにやってみることで解決できたことが多くありました。そういう自由な動きや、とりあえず作ってみること、チームを超えた動きを推奨する STORES の文化が、解決の後押しをしてくれたと感じています。
大切なのは「決めること」「手を動かすこと」
──新機能のリリースをいよいよ迎え、どのようなお気持ちでしょうか。
リリースこそ先日でしたが、その基盤になる部分は少しずつリリースしていたので、一気にリリースが行われたと言うよりも積み上げてきたものが形になったリリースでした。それでも、実際にプロダクトの画面が動いているのをみると「本当に出るんだ」「動いてるぞ」と感動がありました。本当にこのスケジュールでリリースできるとは思えなかった時期もありましたから、一緒に開発を進めてくれたチームに感謝でいっぱいです。
──大変なプロジェクトをリードした片桐さん。仕事で大切にしているのは、どんなことでしょうか。
手を動かすことです。特にこの開発は、「決めること」、「手を動かして作ること」が大きな成功要因になりました。参加人数が多い中、プロジェクトをリードできたのは、このふたつを意識して仕事を進めたからだと感じています。
──最後に、これから目指していることを教えてください。
もっと開発の幅を広げていきたいと思います。これからは、 STORES レジ のバックエンドを担当するのですが、 STORES レジ の開発を通してiOSの開発にも携われるのが今から楽しみです。常に新しい技術を身につけることを意識して、さらにたくさんの技術や知識を身につけていきたいと思います。
そしてそれは、開発に限ったことではありません。このプロジェクトを通して、チームづくりについて考える機会をたくさん得ました。これからは、チームとしてものをつくれる力をつけていきたいと思います。
(写真・文:出川 光)
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