4社統合した STORES だから出せるスケールとスピード感
STORES は複数のプロダクトを提供するコンパウンドスタートアップへと成長を遂げています。その原動力となっているのが、戦略的なM&AとPMIです。4社統合により多様性と規模が拡大する中、事業部間の情報流通や方針連携をさらに円滑にするため「事業統括本部」が設立されました。今回は、事業統括本部で働く御守一樹さんに、新たな組織体制やPMIの歴史、STORES の強みなどについてお話しいただきました
2024年から組織を刷新、横断部門「事業統括本部」新設の背景
──このインタビューでは STORES の変遷と魅力、そして課題についてお話しいただきます。まずは御守さんの現在のお仕事を教えてください。
現在はビジネス統括部門の事業統括本部で、全プロダクトを横断して事業をどう成長させるか、ということに取り組んでいます。この部署で専任で働いているのは私一人で、2024年からの新組織体制が機能するよう、必要な方針や情報をスムーズに流通させる取り組みをしています。組織が大きく変わる中で組織連携をなめらかにし、会社全体の成長を実現することが私の主な役割です。
──今年からの新たな組織体制について、あらためて解説いただけますか。
2023年までの STORES は、それぞれのプロダクトが組織に紐づく、比較的シンプルな組織体制でした。ですが、複数のプロダクトを事業者様に提案するには、プロダクト同士の密な連携が必要になります。その連携コストを省くため、2024年からは事業者様の業界や規模ごとに3つのビジネス系の部門ができ、それぞれの部門が全プロダクトを取り扱うようになりました。
新しい組織体制で組成されたビジネス系の部門は、小売業の事業者様に向き合う「リテール法人部門」、サービス業の事業者様に向き合う「サービス法人部門」、小規模な事業者様に向き合う「カスタマーグロース法人部門」の3つです。この新体制では各部門が事業者様のニーズやそれぞれの業界特有の課題に対応しやすくなりました。一方で、図を見ると分かるように、各部門で複数のプロダクトを扱うためメンバーは多くのプロダクトについて把握する必要がある上、横の連携がさらに複雑になってきます。
──そこで生じる問題を解決するのが御守さんの所属する事業統括本部の役割なのですね。例えばどのような問題があるのでしょうか。
問題のパターンは大きく二つあります。一つは、数値管理に関する課題です。これまで事業者数やGMV(総取引額)は、それぞれのプロダクトが個別に管理していましたが、新しい組織体制になってからは、複数のプロダクトの数字を合算して管理することが求められるようになりました。このため全部門で事業者数の定義を揃えたり、重要数値を共通のフォーマット・基準で見られるようにする必要があります。一見簡単そうに思えるかもしれませんが、全部門の事業構造に対する理解と、多くのステークホルダーの間で調整が必要となる、複雑で根気のいる作業です。
二つ目は、今の組織体制ではプロダクトと組織が1対1の関係ではなくなったため、組織横断的なタスクが発生しやすくなった点です。これまでは、そのプロダクトの課題はそれに紐づく組織が解決していましたが、新しい組織体制では複数のビジネス系部門にまたがる課題が生じることが多くなっていることから、結果としてボールが落ちやすくなります。例えば、各決済事業者と手数料率の交渉といった「どの事業部がやるかは明らかではないが、絶対に必要な仕事」があります。このような組織横断的な問題を見つけ出し、解決するのが事業統括本部の役割です。
組織図は、描いただけでは機能しません。それを実効性のあるものにし、全員が同じ目標を共有しながら戦略実行できるようにすることが私の仕事だと思っています。
──それにより、どのような成果が出ているのでしょうか。
新たな組織体制になってから、新たな顧客ターゲットに一定規模の売り上げをもつ「ミドル事業者様」を据えました。事業統括本部でその定義やデータの集計の仕方を策定することで、モニタリングの環境が整い営業活動の効果をより正確に把握できるようになりました。
また、セールス系部門の戦略的な取り組みにより、四半期ベースでミドル事業者様との商談数は月次で2倍に純増していますし、導入数も当初計画より早いペースで伸びています。
私たちは、計測していない数値を増やしたり減らしたりすることは出来ません。私の仕事はセールスのように売上に直接寄与するわけではありませんが、このようなモニタリング環境の整備などを通して、売上に影響を与えていくものだと思います。
コンパウンドスタートアップは何社かありますが、STORES の特徴は?
──近年コンパウンドスタートアップという言葉をよく聞くようになりました。コンパウンドスタートアップの中でも、 STORES の特徴はどのようなところにあるのでしょうか。
一般的なコンパウンドスタートアップは、自社で一つ目のプロダクトをまず作り、それに付随する形で二つ目、三つ目のプロダクトを作る場合がほとんどです。 STORES の最大の特徴は、4つの独立した会社が統合してできた点です。現STORES は2018年に最初の2社(CoineyとSTORES.jp)が経営統合して生まれた会社ですが、その後も戦略的なM&AとPMIを繰り返しコンパウンド化しています。こういったスタートアップは、他を見渡しても滅多に見つけることはできないと思います。
──それには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
M&AやPMIは、そのコンサルティングを専業にする人がいるくらい複雑で難しいテーマです。バックグラウンドも働き方も文化もまるでちがうメンバーが集まって一緒に仕事ができるようになるには、とてつもない苦労が伴います。一方で、成功すれば圧倒的なスピードでスケールアップができるメリットがあります。
それぞれのプロダクトをゼロから作って、市場からニーズがある状態を作るには、膨大な時間やリソースが必要です。それを会社を丸ごと引き入れることでスケールしやすいようにしているんです。
STORES のPMIの歴史と強み
──ここからは、御守さんの視点で STORES について語っていただきたいと思います。 STORES のM&AとPMIを、御守さんはどのように感じてきましたか?
私が入社した2020年1月当初の STORES は、2社が物理的に同じオフィスで働いているという雰囲気で、メンバー同士の心理的な壁が大きかったと思います。何も知らない状態でオフィスに入った時も、すぐにその境界線が手に取るようにわかりました。
そこから、「敬意と疑念」をテーマに互いの背景を理解し合うフェーズを経て、徐々に心理的な壁は少しずつ取り払われていったように思います。そして、最近になって更に融合プロセスが進み、要らない遠慮が取り払われ、新たなフェーズに入ったと感じています。
この間にも、新たに2社のM&AとPMIがあったことも、心理的な壁を取り払った大きな要因です。 社歴の長いメンバーは他の会社のメンバーが仲間入りすることに慣れていきましたし、数社が集まってできた会社である前提で入社するメンバーの割合が増えてきたことで、メンバー間でもそれぞれの出身会社が全く気にならない環境が出来上がりました。
私自身、前職でもM&Aを見たことはありましたが、ここまでしっかりと信念と熱意を持って、メンバーや組織文化を混ぜ切ろうとしているのを見たのは初めてです。多くのメンバーが複数回のM&AとPMIを経験していることで、私たちは変化を恐れず、むしろそれを成長の機会として捉える文化があると思っています。これは、組織としても大きな優位性です。
──それはなぜですか?
多くの人が複数回のPMIを経験していると、今後も大きな変化に適応しやすくなります。「グループインして馴染むまでは、少々ぎこちないやりとりがあるものだよね」「お互いのことがわからないので、計画通り進むことは珍しいよね」など、これまでの経験から方針や計画を立てられるので、無駄なストレスや、不幸な辞め方をすることを防ぐことができます。大きな変化があっても仕事に集中できる組織であることは、 STORES の強みの一つです。
メンバーひとりひとりのキャリアにとっても、会社が大きな変革期にある時の景色を見た経験は大きなプラスになります。例えば、スタートアップが急成長する過程や、異なる企業文化を持つ組織が融合していく様子を間近で見られることは、とてもユニークで価値ある経験です。何か大きな変化を迎えた時に、今の経験からそれを乗り越えることができるはずです。
──現在の STORES に入社して活躍できるのはどんな方だと思いますか?
STORES は第二創業期を迎えています。この時期に活躍できるのは、“ふつうにちゃんとできる人”。一発逆転する力ではなく、複雑なものにじっくり向き合う力や、相手への配慮、地道な数値改善を積み重ねられるような、地に足のついたビジネス力が重宝されると思います。おそらく1000人、2000人規模の組織を経験してきた方が合うのではないでしょうか。これから STORES は“大人の会社”になろうとしていますから、その景色を見たことがある方は仕事がしやすいと思います。
──今の STORES のメンバーと、これから入社してくださる方々とともに御守さんが目指すのはどのようなことですか?
私の目標は STORES に関わる全ての人が、ここで働くこと・働いたことを誇りに思えるように STORES を大きく成功させることです。また、個人的には社員数が1000人を超える過程を見届けたいと思います。前職は(今では大企業ですが)入社時の私の社員番号は954。社員が100人から1000人になる過程は経験していません。社員が100人から1000人になる時、どんな景色が見えるのか。それを見るため、 STORES の成功を全力で後押しし、早くそこに辿り着きたいと思います。
(写真・文:出川 光)
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