STORES のEMになった森弘さんに聞いた、「任せる」と「助ける」のバランス
「森弘さんて優しくて面白くて」とこの STORES Peopleのインタビューリストを眺めながらメンバーが話しているのを聞いて、本当にそうだなと思ったのが1ヶ月前のこと。いざインタビューでEMになった森弘さんのお話を聞いていると、その優しさや面白さにも、メンバーへの思いや努力が秘められているのがわかってきました。どんな気持ちでエンジニアリングマネジャーを行い、今何にわくわくしているのか。お話を聞きました。
「マジでなんでもやる」僕のEMのスタイル
──前回のご登場から、少し時間が経ちましたので、あらためて現在のお仕事を教えてください。
現在も変わらず、STORES のリテール部門である STORES(ネットショップ)と STORES レジの開発をしています。変化があったのはEM(エンジニアリングマネジャー)になったこと。現在6名のチームのマネジメントをしています。
──EMの仕事は、主にピープルマネジメントなのでしょうか?
この定義は会社によって異なるので一概には言えませんので、僕の場合をお話します。僕にとって、EMの仕事内容は、成果を出すために必要なことならなんでも。目標設定のサポート、評価、ピープルマネジメントはもちろん、プロダクトに必要な機能の提案や実現のためにコードを書くことも、「マジでなんでもやる」のが僕のスタイルです。
──かなり業務範囲が広いんですね。大変なことはありませんか?
チームメンバーに恵まれているので、ピープルマネジメントの苦労が少なく、そのおかげで負担を感じずにすんでいます。僕は福岡ではたらいているのですが、リモートワークもピープルマネジメントにはプラスの面が多くて。
──それは意外ですね。
パーソナルな話をする時に、オンラインミーティングがとても便利なんです。会議室を取る苦労もないですし、誰に聞こえているわけでもないので腹を割って話しやすい。
また、成果を出すために事業部を跨いでコミュニケーションする時にも便利です。STORES のエンジニアリング組織のあるべき姿とは何なのかを追求するため、他のEMと議論することもしばしば。さまざまな場所からはたらくEM同士や、それをマネジメントするシニアマネジャーとオンラインミーティングを行い、より成果の出やすい組織を探っています。
──「より成果の出やすい組織」というと、どのようなものなのでしょう。
最近では、リテール開発本部の組織改変を行いました。これまではフロントエンドとバックエンドが別々のチームで開発していたので、チームのスケジュール調整がうまくできずに業務が止まってしまうなど、効率的でない面がありました。また、エンジニアひとりひとりのキャリアとしても、互いの領域に興味があってもチャレンジできない課題があったのです。
こうした状況を受けて、フロントエンドとバックエンドの垣根を取っ払いました。組織改変を行なったばかりの頃は、それまで持っていた帰属意識がなかなか抜けないこともありましたが、メンバーが積極的に領域を跨いで開発してくれるので、それももうすぐ解決するでしょう。
──自分のチームのマネジメントだけでなく、開発しやすい環境を作っているんですね。
月曜日が来るのが嫌になってしまう前に
──最近印象に残った仕事はありますか?
大変だったこともたくさんありますが、ここは嬉しかったお話を。プロダクトを横断した機能開発プロジェクトに、思い切って、経験は浅いけれど期待をかけているエンジニアをアサインしたのです。それまでの半年間で大きな成果を出してくれたので、難しい課題を解いてくれるだろうと送り出したものの、正直に言えば心配な気持ちも残っていました。
ところが蓋を開けてみると、そのメンバーがコードの修正を提案し、採用され、実際に本番で動くところまで持って行ってくれて。本人はだいぶ奮闘しているのが伺えましたが、期待をかけたメンバーが成果を出してくれたことがとても嬉しかったです。まさにこれからプロダクト間の連携を深めていきたいというタイミングで、大活躍を見せてくれました。
──そうやって思い切って仕事を任せる時には、マネジャーのサポートも大切ですよね。どうやってサポートを行なっていますか?
成果を出してくれて嬉しいというお話をしましたが、それは安心して働いていただける上でのことです。どれだけ大きな仕事を任されても、それがプレッシャーになって、月曜日が来るのが憂鬱でたまらなくなってしまったら意味がない。なので、それを言語化して伝えるようにしています。「月曜日が来るのが嫌になってしまうくらい辛い気持ちになったら、いつでも相談してください」って。
──そう言ってもらえると、助けを求めるラインがわかりやすくて良いですね。実際に相談されることもよくあるのですか?
その相談をされる前にサポートできるよう、話す機会を増やしているつもりです。毎日の昼会で雑談したり、定期的に1on1を行ったり。また、ミーティングの場ではなるべく相談してもらいやすくするためにつとめて明るく振る舞い、しょうもないことを言い続けるようにしています。実際、マネージャーになってみるとどうしても忙しくなってしまうんですよ。それでも気軽に声をかけてもらえるように、ずっとしょうもないことを言い続ける。本当は暗い人間なのに頑張ってるんですよ(笑)。
──森弘さんにそんなイメージを持ったことがなかったので、術中にはまっていたのかもしれません(笑)。実際に、効果のほどは?
コードの品質や、チームの仕事の進め方や巻き込み方が少しずつ良くなっているのを感じます。コードを書いてリリースするのとは違って、穏やかな変化ですが。
STORES は「強い会社」になってきた
──森弘さんは社歴が長いですよね。最近の STORES を改めて言葉にするなら、どんな会社だと思いますか?
「強い会社」になったと思います。以前よりさらに「やることはやろうぜ」という雰囲気になってきたと思いますし、実際に技術レベルが上がったと思います。この背景には、事業が成長したこと、複数のスタートアップが作ってきたプロダクトを統合するという他に類を見ない面白い課題を解こうとしていることがあります。さらに、プロダクトそれぞれが持っている課題もまた面白い。
簡単ではないけれど、面白い課題によって技術レベルが引き上げられ、その面白さに気づいた強いエンジニアたちが続々と参画してくれる。そのおかげで、仕事の基準がどんどん引き上げられていくのを感じます。
──それだけ聞くと、ちょっと厳しい会社になったのかな、という印象もあります。
社内の雰囲気はこれまで通りですし、新しく入ってきてくださる錚々たるエンジニアの方々も人柄のいい方ばかりです。あの温厚な佐俣さんや藤村さんが採用した方達ですから。新しく入ってくださるエンジニアの方々のおかげで僕自身も成長できた実感があります。
──そんな現在の STORES で、どんな方と一緒にはたらきたいですか?
その人なりの「Just for Fun」における「Fun」を持っていて、それをエンジンのようにして事業に取り組んでくれる人がいいなと思います。例えば、僕は人と話すことと、技術にまつわることが好き。その「Fun」があるから、エンジニアリングやマネジメントを楽しく行えているのだと思います。そういう仕事に紐づく「Fun」をモチベーションにしている人と一緒にはたらきたいですね。
定年までの25年間にやりたいたくさんのこと
──これからやりたいことはありますか?
最近は、未来のことを考える時に定年までの時間を意識します。先のことのように見えて、25年はけっこう近い。時間は有限だなと思うのです。それまでにやりたいことも、成し遂げたいことも、学びたいこともいっぱいあるので、何をやりたいかを絞っていかなければならないなと感じ始めました。
例えば、RubyKaigiでプロポーザルを採択されるエンジニアになりたい、そのためには技術のことをもっと学びたいし、大学院で情報工学の研究をしてみたい。あるいは、STORES の各プロダクトがつながった姿を見てみたい。さらに、ビジネスのことをもっとわかるようになるために、MBAを取ってみたいし、もちろん家族とたくさん過ごしたい。定年までの間に、このうちのいくつを達成できるだろうと考えるんです。これらを、ひとつずつ、成し遂げていけたらなと思います。もちろん、STORES で成果を出しながら。
(写真・文:出川 光)
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