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「ぼくは目立たなくていい」STORESのデジタルインフラ化を牽引するVPoEの誇り

2015年のストアーズ・ドット・ジェイピーの前身であるブラケット入社以来、STORESのエンジニアリングを支えてきた矢部剛嗣(やべ・たけし)さん。その後、CTOを経てVPoEに就任し、STORESの開発、そしてチームを牽引しています。STORESというプロダクトと共に歩んできた矢部さんは、過去、現在、そしてこれからのストアーズ・ドット・ジェーピー、さらにはheyをどのように見ているのでしょうか。「自分は目立たなくていい」という矢部さんの言葉の真意に迫ります。

入社を後悔した(?)クリスマスイベント

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ー本題に入る前に、ご入社の経緯から教えてください。

ブラケット(現ストアーズ・ドット・ジェイピー)は3社目なんです。もともと新卒で入社したのが、独立系SI。その後、パッケージベンダーに転職して、現在に至ります。

STORESを知ったきっかけは、2社目で働いていたときに参加したRubyの勉強会です。知り合ったエンジニアに、「どんな仕事をしているんですか?」と聞いたら、「STORES.jp(当時)というサービスをつくっているんですよ」と。その場で会員登録して、ちょっといじっていたら、会話している間に自分のネットショップができてしまった。しかも、使い勝手もいい。直感的に「おもしろいプロダクトだ」と思い、転職先のひとつとして考えるようになりました。

ー入社時の印象は覚えていますか?

それが……良くも悪くも社内の雰囲気やノリがすごく若い組織でしたね。12月のクリスマスイベントなんかは、実際に入社する直前に参加したんですが「すごい会社に就職を決めてしまったな」と若干尻込みしたのを覚えています(笑)。

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―す、すごそうですね。では、雰囲気ではなく、プロダクトとの向き合い方という点ではどうでしょう?

あくまでも主観ですが、当時はトップが創業者の光本勇介さんだったこともあり「インパクトがあるか」「イケてるかどうか」が判断基準になっていたように思えます。

当時はそれでよかった。ただ、個人的にはインパクトを残すよりも「もっと安定的に稼働できるようにしたい」という気持ちが強くて。サービスが停止してしまうことも多かったし。2016年10月にトップが光本さんから現代表取締役の塚原文奈さんに変わってからは、「ストアのオーナーさんがどれだけ使いやすいか」が判断基準として強くなってきたので、自分の趣向性と重なってきた感覚はありましたね。

STORESを生活のデジタルインフラに

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ー矢部さんの関わり方としてはどのように変化していったのでしょうか?

まずは安定稼働を目指しました。入社から1〜1年半、それこそheyを設立するまではとにかくシステムがちゃんとした構成できちんと動かすことに力を注いでいました。

hey設立以降は、一緒に知恵を絞って手を動かしてくれる仲間が増えたこともあり、少し目線が上がりましたね。開発自体は現場のメンバーに任せて、自分はユーザーにちゃんと価値を提供するためのチームビルディングに注力するようになりました。

具体的には、より専門性を発揮できるようにフロントエンドとサーバーサイドでチームを分けたり、SREチームをつくったり。いまはそれぞれのチームが工夫しながら改善を進めてくれているので、とても心強く感じます。

ーCTO就任の経緯も教えてください。

当時は、MBOしたばかりで塚原さんが大変そうだったので「何か手伝えることはないか」と考えたのがきっかけです。全社員は20名のうち約半数がエンジニア。彼らを自分がマネジメントできるようなったら、多少は塚原さんがラクになると思っていて。ちょうど塚原さんから打診があったので、承諾しました。

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ーCTOに就任して、何か意識的にやったことってあるんですか?

いや、あまりないです(笑)。いままでやってきたことをきちんと続けてきただけ。「CTO」もあくまでも肩書きのひとつだと思っています。

ー矢部さんのそういった仕事へのスタンスって、プロダクトへの関わり方にも通じるものがあるような気がします。

確かに「CTOとして目立ちたい」「STORESを多くのひとに知ってほしい」という欲は強くないかもしれませんね。

「よくわからないけど使いやすい」「気付いたらSTORESを使っていた」という“言語化しづらいけどなんかいいよね”ぐらいの存在感がベストだと考えているんです。「インフラになる」ってそういうことじゃないですか。


これからも、エンジニアが楽しく働ける環境を

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ー塚原さんの代表就任は、ひとりのエンジニアとしてどんな印象を受けましたか?

大きく分けてふたつの好影響があったと思います。

ひとつめは、判断基準として、ユーザー目線を意識するようになったこと。塚原さん自身がユーザーファーストを徹底しているため、判断基準にブレがない。結果として、会社全体でユーザーに向き合えているので、結果がフィードバックとして返ってくる。エンジニアとして、ユーザーへの影響をビシビシ感じながらプロダクトと向き合えるのは楽しいです。

もうひとつは、意見を発信しやすくなったこと。塚原さんが意見を聞いてくれるので、ちゃんと発言できるし、信頼してくれるので安心感を得られるようになりました。これからは、ぼくが主導して開発チームのみんなが楽しく働ける状態をつくっていきたいと思います。

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ーCTOに就任以降「これはうまくいった」と感じたことはありますか?

いいメンバーが揃っていたこともあり、チームビルディングはうまくできた自負はあります。この先、チームの良さを維持したまま拡大していくことが目標であり、課題ですね。自分自身、エンジニアとして塚原さんから信頼を得て自由にやらせてもらえたことがすごく嬉しかったし、楽しかったので、同じように裁量のある働き方を実現させたいと思います。

ー今後STORESはどのようにしていきたいと考えていますか?

STORESを生活に根付いたプラットフォームにしていきたいと考えているところです。ここ数ヶ月でそのあたりの開発にようやく注力できるようになったので、すごくワクワクしています。

もう少し具体的にご説明すると、いまはSTORESというひとつのネットショップ作成サービスとして動いていますが、これからは機能ごとに分類していきます。そして、オンライン予約からEC、オンライン決済までをまかなえるデジタルインフラとして確立し、個人や中小企業が活用できるようにしていきたいですね。

ー最後に「こういうひとと一緒に働きたい」という人物像があったら教えてください。

もう少し実務的なお話をすると、エンジニアとしてSTORESへの関わり方が具体的にイメージできているひと、もしくは特定の技術領域をサポートできるひとにお越しいただきたいですね。

自身ではなく、プロダクトやチームにベクトルを向けて働く矢部さん。あまり言葉は多くないかもしれないけれど、背中で見せるその働きざまにはエンジニアとしての美学が宿っているように見えました。

矢部さんのお気に入りのストア:唯一味
「七味が食べられない奥さんのためにいい一味を探している時に見つけたお店。これからの季節鍋なんかにいいですね。」

(文:田中 嘉人 / 写真レイアウト:出川 光)


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