やりたい仕事のためなら職種も役割も超えて。STORES 決済 のEMのしごと
モバイル本部の決済グループでエンジニアリングマネージャー(以下、EM)として、エンジニアリングだけでなくピープルマネジメントも行う岩井良太さん。これまでのキャリア、リモートワーク下での苦労など、さまざまなお話を聞きました。
聞き手:坂田昇一
やりたいことから逆算するキャリア
──岩井さんといえば、EMでありながらも「iOSエンジニアです」と自己紹介するイメージがあります。どんなきっかけでiOSエンジニアを志したんですか?
大学の時の同級生がAppleのノートパソコンを持っていて、めっちゃ格好いいなと思ったんです。大学のPC室も全部Macで、これもまた、めっちゃ格好いいなと思って。「ファイルをゴミ箱に入れるとゴミ箱が膨らむんだ、超かっけーじゃん!」なんて、そんな感じでした。それから、いつかAppleに関わる仕事ができたらいいなと思うようになりました。そのためにはApple向けのプログラムを書けばいいのかな、という漠然とした思いでしたが、当時はiPhoneもなく、まだMacの仕事が少ない時期でした。
──それをどうやって仕事にしたんですか?
一番はじめに入った会社は、組み込み系の開発を担当していて、AppleともMacとも関係のない仕事をしていました。そこで3年くらい働いたのですが、やっぱりこれじゃないなと思って転職しました。その後は小さな受託開発の会社に勤めていたのですが、自分でMacの仕事を探してきてやっていました。当時ちょうどMac OS X が出た頃で、アプリを移植する仕事がけっこうあったんですよ。
そうこうするうちにiPhoneが出て、2008年にiPhone OS SDK(現 iOS SDK 以下、SDK)が公開された世界開発者会議(WWDC)に足を運んだら、スティーブ・ジョブズがiPhoneのアプリを誰でも作れるようになると発表していました。帰ってきてからすぐに営業を始めて、iPhoneのアプリをたくさん作りましたね。
──ニッチ産業が一転、希少価値が高く、かつ必要とされるものに変わったんですね。実感はありましたか?
営業がすごく楽になりましたね。「iPhoneむけ」といえばみんなわかってくれる。Macだけの時代から濃いコミュニティはあってそれはそれで良い点もあったのですが、iPhoneの登場により情報量が一気に増えました。
──なるほど。さらに、heyに入ってSTORES 決済 を担当するのは、複雑な決済システムという壁があったと思います。heyに入られたのはなぜだったのでしょうか。
はじめは、heyに対して派手な印象がありました。社名のカジュアルさ、経営陣の写真のビジュアルなど、格好いいイメージがあったんです。良くも悪くも、会社とサービスのイメージがつながらないなと思っていました。けれど、面接をしながら中の人とお話しすると、どんな思いでサービスをやっているかが見えてきました。ぱっと見はチャラいけど、めっちゃ熱量がある。経営陣だけでなく、メンバーまで誰もがオーナーさんに向き合っているところに共感して、こういうところで働きたいと思いました。会社のフェーズも発展中という感じで、面白そうだなって。
「謎の仕様でも極力それに沿って」。コードを読み解き手掛けたリニューアル
──2020年に入社されて、2021年の夏頃からEMになられました。これまでを振り返ってみて、いかがですか?印象に残った仕事など、あるでしょうか?
最初のほうの仕事で印象に残っているのは、当時の決済のSDKに電子マネー決済を組み込む仕事でした。まだ入社1ヶ月くらいのタイミングだったんですが特にサポートがなかったので、手元にあるソースコードとドキュメントを頼りに手探りで組み込んだ思い出があります。既存のコードを読み込まないと作業が進まないので、入社間もないタイミングで細かいところまでコードを見れたのはよかったなと思います。
──それはけっこう大変だったんじゃないですか?
あはは。他の人だったら、困っちゃうんだろうなと思いましたが、僕はけっこうそういうのが嫌いじゃないタイプなんですよね。
──STORES 決済 アプリの Swift化というタスクはいかがでしたか?順次書き直していくのではなく、スクラッチで書き直していましたよね。
私が入社した時点で、すでにこのプロジェクトは50%ほど進んでいました。スクラッチで書き直したのは、既存のコード自体がかなり入り組んでいたので、アーキテクチャからまるっと刷新しようと判断したからです。時間がかかってしまいましたが、うまくリニューアルができたので、正しい判断だったのではと思います。
──難しかった点はありましたか?
過去の経緯を知っている人がいなくて、なぜこの仕様になっているのかがわからない部分があったのは苦労しました。PdMチームやQAチームに確認してもわからなかったこともあります。さらに、よくよく調べてみるとなぜそうなっているかがわからない謎の仕様にも意味があったりするので、「謎の仕様でも極力それに沿って作っていく」という方針のもとに進めていきました。
──決済に関わるサービス特有の難しさもあったのではないかと思います。
そうですね。乗り越えられているのかはわかりませんが、時間をかけてひたすら、という感じでしょうか。はじめは決済の専門用語がわからないところから始まり、社内wikiのesaに上がっている用語集をかたっぱしから読むことから始めました。けれどこの用語集も3つあったりして(笑)。苦労しながら用語を覚えて、実際の機能追加などをやりながら覚えていきました。
さきほどお話ししたクレジットカードのタッチ決済を追加した時はPdMチーム、QAチームを交えて勉強会をするところから始めています。まず勉強するのは地道な方法ですが、おかげでみんなで共通の知識を持てたのは大きな収穫でした。
──先回りや効率化よりも、地道な勉強から始めるという姿勢が岩井さんらしいような気がします。機能開発で最も気を使う部分はどんなところなのでしょうか?
STORES レジ も同じだと思いますが、やはりハードウェアに関わることは難易度も高いし、気を使います。STORES 決済 はカードリーダーとレシート印刷機がBluetoothでつながるんですが、QAチームが不具合を報告してくれても、手元にあるプリンターだと再現しなかったりするんです。それで、QAチームが使ったプリンターを見るために出社したりして。ハードウェア連携の難しさを実感しています。
──なるほど。ハードウェアだとリモートならではの難しさもありそうですね。
そうですね。特にリモートワークが始まったばかりの頃はまだ全てのメンバーの手元に機材がそろっておらず苦労することが多かったです。今ではひととおりの機材が手元にある状態なので普段の開発業務で困っているわけではありませんが、不具合が出た時などはもどかしいこともあります。また、EMとして、チームのコミュニケーションには工夫が必要でした。リモートワークになってから積極的に雑談の場を設けたりして。
あらたに根付いたチームランチの文化と、EMの役割
──今日きいてみたかったトピックのひとつに、リモートワーク中も続いているチームランチのことがあるんです。週に一度リモートでオンラインランチをやるだけでなく、ゲストもいるとか?
そうなんです。もともとは物理的に出社している頃に始まった習慣で、外にご飯を食べに行っていました。その流れでオンラインランチをするようになりました。けれど、オンラインでメンバーも同じだとだんだん話題がなくなってきてしまうんですよね。それで、途中からゲストを呼ぶことにしたんです。はじめは業務で関わることのある身近なチームの方をゲストに呼んでいたのですが、だんだん直接お話ししたことがない方も呼ぶようになりました。
──それだとけっこう緊張しませんか?お互い初めて顔を合わせるのでは、何を話していいかわからなくなってしまいそうです。
そこで、ゲストにきた人に次のゲストを呼んでいただいて、そのゲストの回のランチにも来ていただくことにしたんですよ。なので、ゲストは2回ランチにきていただくことになるんです。そうすると、2回目のゲストは少し緊張がほぐれているし、呼んでいただいた初回のゲストは知っている人がいるので。
──なるほど。どんなメンバーが来てくれているんですか?
すごく幅広いんですよ。決済はもちろん、予約、リテール、仙台のCSなど、普段直接仕事で接点がない人とも会話ができて、面白いなと思っています。ゴールは代表の佐藤さんに来ていただくこと。あとちょっとなんですけどね(笑)。
──これはもう、このチームの文化と言える習慣になっていますね。
2年続けているので、今まで来てくれた方を振り返るとすごいことになりそうです。最初から書いておけばよかったなあ。
このチームランチは自分が始めた取り組みではないのですが、EMになってからはこのような活動も含め、チームの人をもっと見て、みんなが働きやすいかや、どうキャリアアップしていきたいかを考えるようになったかもしれません。それぞれ、どういうキャリアを積んでいきたいかの希望があるので、それとお仕事をうまくつなげて、みんながやりたい方向に進めるように動くことを意識しています。
──これからの展望はどんなものなんでしょうか。
コードを書いているのは、クイズを解いているような楽しさがあります。不具合の修正ができた時は、クイズに回答できたような快感があるんですよね。こういう仕事はいつか手放さないといけないかもしれませんが、やれるうちはやりたいなと思っています。
ただ、自分がやりたい仕事のためならエンジニアリングに限らずどんな領域でもやっていきたいと思います。それこそ、最初にMacに関わる仕事がしたくて営業をやっていたように、自分が楽しいな、と思える仕事のためなら、役割や領域を超えて、どんなことにも挑戦してみたいですね。
(写真・文:出川 光)
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