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未来を見据えた取り組み、2040年店舗の事業環境はどう変化するのか?

PROFILE
末重拓己・・・テクノロジー部門/データ本部 データアナリスト
公認会計士として会計監査業務に従事した後、東京工業大学大学院情報理工学研究科にてデータ分析を専攻し、金融市場のミクロ構造分析に関する研究を行う。2021年、ヘイ(現 STORES)に入社し、テクノロジー部門のデータアナリストとして、事業成長のためのデータ分析や探索的プロジェクトを担当。筑波大学 社会工学系データ分析講義の非常勤講師、趣味は料理。

先日、「ストアーズはECの会社、ではない」という記事が公開されました。この記事内では「2040年のお店の事業PL(損益計算)」をひくプロジェクについて触れられていましたが、今回の記事では具体的にどのようにして未来のPLをひいて、そこから何を考察したか、をお話ししたいと思います。と言っても、PLの話から始めても退屈だと思いますので、なぜストアーズがこの取り組みを始めたのか、その背景からお話しします。


なぜ未来のPLに目を向けるのか

ストアーズでは「Just for Fun」をミッションに、こだわりや情熱、たのしみに駆動される経済を目指しています。私たちは、日々 ストアーズのプロダクトを利用する事業者が、いま何に困っているのか」をアンケートやユーザヒアリングを通して探っています。その中で最近、増えてきている課題が人材が採用できないというものです。

これまで事業者の課題といえば「集客」関連が多かったのですが、先日実施したアンケートでは、特に実店舗をもつ事業者の間で「人手不足」が新しい事業課題として浮き彫りになりました。人手不足は日本の労働人口の減少という大きな経済環境の変化に伴い、ストアーズの事業者にも影響を及ぼしています。

今後も労働人口は増えることはなく、事業運営に逆風となる経済環境の変化が続いていく時代では、”いま”の調査だけでなく、”将来”の経済環境がお店や事業にどのような影響を及ぼすか?という視点で、将来の事業上の悩みを先行調査することが必要です。そこでストアーズでは2040年を見据えた事業のPLシミュレーションを試験的に行ってみることにしました。

2040年、日本の経済状況を予測する

①人口推移と労働市場の変化

2040年の日本はどうなっているでしょうか?今から15年以上先のことを正確に予測できるはずがないのですが、確率の高いシナリオなら予想することができます。まずは、先ほどの人手不足に関連した人口推移についてです。

出典:厚生労働省「人口の推移、人口構造の変化

将来の人口推移データによると、2040年には現在の1億3000万人から15%減の1億1000万になると予測されています。結果、労働人口だけでなく「モノ」や「サービス」を消費する消費人口も減少するため、2040年には事業者間でのお客さんの取り合いが、一層厳しくなることが予想されます。

②最低賃金の上昇とインフレの影響

次に最低賃金の動向です。政府は2030年半ばまでに全国平均の最低賃金を1500円労働団体は1600〜1900円とする目標を掲げていることから、足元の上昇率とこれらの目標水準より、2040年の賃金は現在の約2倍、2000円を超えている可能性が高いです。さらに、最低賃金の上昇に伴いインフレ率の上昇も続くと予想されています。2040年にはインフレでモノやサービスの値段が高くなり、最低賃金は2000円に上昇する中で、お客さんが15%も減ることを考えると、今のままの事業運営は難しくなることが伝わると思います。

③事業シミュレーションの実施

これらの経済環境の変化が事業にどう影響するかを詳しく調べるため、前述のお店や事業環境の変化に大きな影響を与えそうな
- インフレ率
- 人口推移
- 最低賃金
の推移と合わせて、事業運営関連のデータを下表のとおり仮置きし、事業規模別に「利益率」がどうなるかをシミュレーションしました。仮置きする数字水準は業種ごとに異なりますが、今回はストアーズで実店舗を持っている事業者に多い「カフェ」に焦点をあてて予測しました。

実際のプロジェクトでは複数エリアのシミュレーションを行いましたが、この記事では2040年に全国平均と同程度(約15%)の人口減少が見込まれている神戸市の結果を下図に示しました。※詳しいシミュレーション条件は、文末記載を参照

初期客単価は800円、初期賃料は坪あたり13,000円としました。推移を比較しやすいよう、初期利益率がどの坪数でも25%となるように1坪あたり客数を調整しています。シミュレーションした結果、10坪だと概ね現状維持という結果ですが、20坪〜50坪では人件費の負担が大きくなり(2024年 vs 2040年比で100%上昇)事業規模が大きいほど利益率が悪化する結果となっています。

シミュレーションから見える利益率アップの鍵

神戸市の例から、想定した経済環境下では事業規模が大きいほど利益率への悪影響が大きいことがわかりました。というのも「最低賃金上昇(100%)>インフレ上昇(37%)>人口減少(15%)」の順で影響が大きく、最も変化の大きい「最低賃金上昇」の影響を受けやすいのが規模の大きい事業者だからです。

ただし、事業規模が大きいと言っても大企業のような規模感ではなく、20〜50坪でパートを数人雇用するような規模の事業者から、人件費の影響を大きく受けることが分かります。つまり、少人数であっても人手を使う事業展開は年々難しくなるため、「いかに接客に時間をかけずに、売上を上げられるか」が重要なポイントになることが分かります。

この「接客に時間をかけない取り組み」は既に広く始まっており、飲食店などでよく見かけるようになったテーブルオーダー・セルフレジ・モバイルオーダーなどが最たる例です。実際、下図に示したとおり「1人あたり接客時間を5分短縮」するだけで利益率が10〜15%改善し、2024年から2040年にかけての利益率の落ち込み率も30〜50%改善される結果となっています。

さらに、「いかに接客価値を最大化するか」も重要な観点です。実店舗に来店したお客さんにECへの導線を用意したり、リピート購入に繋げるなど、来店時だけでなく「リピートまで見据えた広い意味での接客」がより一層必要になります。

ストアーズの現在地と未来

ストアーズを利用している中小事業者にとって、足元の人手不足は大きな課題です。また、今後の最低賃金の上昇を加味すると今まで通りの事業運営では、事業継続ができなくなる未来シナリオが想定されます。ストアーズはこの変化の波を一緒に乗り越えられる存在になれるよう、接客効率化や接客価値最大化の実現を目指して解くべき課題は何かを検証し、ECという枠組みに留まらず、長期的な視点から必要な製品や機能の開発に取り組んでいます。

末重拓己
テクノロジー部門データ本部 データアナリスト

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デザイン:石橋 講平

※シミュレーション条件 インフレ率・人口推移・最低賃金は公的機関のデータから次の扱いとしています。 インフレ率:2040年までIMFの予想値の2%で横引き、人口推移:初期の顧客数に地域別の人口推移と同率で変化、最低賃金:2040年に全国平均が2000円になるよう地域別に毎年同率で上昇。事業運営に関連するデータは簡易化のためインフレ率・人口推移・賃金のいずれかに比例させています。 インフレ率比例- 客単価:初期客単価がインフレ率に合わせて推移、原価率:売上の20%で固定、光熱費:売上の8%で固定- 賃料:初期賃料がインフレ率に合わせて推移、人口比例 - 顧客数:1坪あたり客数×坪数の初期客数が人口推移に合わせて推移、最低賃金推移 パート賃金:最低賃金に合わせて推移(事業者の給料は考慮しない)、パート雇用の有無については、 1人当たり接客時間:15分で固定 1坪あたり客数:後述 上記の変数を用いて「総接客時間 = 1坪あたり客数×坪数×1人当たり接客時間」を計算し、事業運営者の労働時間(8時間)を上回る場合、その時間分はパートを雇用とする。

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