目指しているのは引っ掛かりのないデザイン。STORES で組織横断でデザインをすること
デザイン部門のプロダクトデザイン本部ではたらく木倉谷 伸之さん。組織横断のデザインを手掛けています。はたらいている場所はなんと京都。リモートワークをベースにしながら、どのように仕事を進めているのでしょうか。デザイナーを志したきっかけや、理想のデザイン、組織の中での調整のコツに至るまで、現在のお仕事の話を幅広く聞きました。
組織を横断するプロジェクトのデザイン
──まずは自己紹介をお願いします。
木倉谷です。デザイン部門でプロダクトデザイナーをしています。
──プロダクトデザイナーというと、STORES のどれかのプロダクトを担当されているのでしょうか?
いいえ。プロダクトに紐づくデザイナーではなく、組織を横断して全てのプロダクトをまたがる機能などのデザインをしています。これまでの STORES はそれぞれのプロダクトを別々に磨き込んでいましたが、去年あたりから STORES 全体で価値を作るため、いくつもプロダクトを持っている強みを生かした機能を作るようになりました。
手掛けるのはひとつのプロダクトを使っているオーナーさんに対してクロスユースを訴求するバナーを設置するといった小さなものから、プロダクトを横断した大掛かりな機能までさまざまです。
──現在何人くらいの体制でデザインをされているのでしょうか?
横断メンバーとして事業部とコミュニケーションを取るのは井出さんと僕です。現場で手を動かしているメンバーは、僕とデザインシステムを作っている、すなすなさん(砂田 勇輔さんのこと)ですね。
──少数精鋭で組織を横断するプロジェクトのデザインを手掛けているんですね。
ユーザーに寄り添うデザイン
──これまでのキャリアのことを伺ってみたいと思います。少し遡りますが、デザインを始めたきっかけは何ですか?
僕はもともと理系の高校生でした。浪人時に偶然美大の卒業制作展に行き、とてもしっくりきたのです。特に、モノで課題解決ができるところに惹かれて、美大の工業デザインを学ぶ学部に入学しました。
——在学中に目指していたデザインや、影響を受けたデザイナーはいましたか?
清水久和さんというプロダクトデザイナーにとても影響を受けました。持ち手が花びらのようになっていて、デザインとして美しい上に手にぴったり馴染むハサミや、使い捨ての木製スプーンをモチーフに純金メッキで作ったアイスクリームの冷たさを楽しめるアイスクリームスプーンなど、ユーモアがあり、それでいて道具として優秀なデザインが好きでデザイナーになることを決心しました。
この方の展示スタッフをしたのがきっかけだったんですが。それまで飲み会に明け暮れていた大学生活も、この出会いで一変してデザインにのめり込むようになりました
このようなユーザーに寄り添うデザインを自分でもやってみたいと考えて、卒業制作では息を吹き込むことで機能する「呼吸する家電」というコンセプトで実際のプロトタイプを作って展示しました。
──素敵ですね。卒業後はデザインの仕事を?
国内大手メーカーに就職し、家電などのハードウェアのデザインをしていました。4年間勤めたうちの最初の2年はハードウェア、残りの2年はUXをやっていたのですが、あまり成長できているという実感がなくて。
実際のデザインはモデルチェンジがほとんどでゼロから何かを生み出すことが難しく、何よりもデザインよりも他の仕事にパワーバランスが傾いていたので何かを提案したりデザインから商品を考えたりすることができませんでした。
このまま終身雇用に甘えて茹でガエルのようになってしまうくらいならと、転職を見据えてUXの部署に入る時に、大学の先輩だった久下さんを通して STORES を知り興味を持ちました。
──実際に入社してみて、いかがですか?
組織に「デザイン思考」がきちんと根付いていることに驚きました。オーナーさんにとってプロダクトがどうあるべきかという話をみんながしていて、誰もが「デザイン思考」を持っている。職種に関係なく経営陣からメンバーまで誰もがUXの話をしているのはとても珍しい組織だと思います。「デザイナーに人権があるな」と感じました。この感覚はもちろん今でも続いています。
他部署との調整は前職で培ったもの。横断プロジェクトのやりがい
——組織を横断するプロジェクトは、デザインだけでなく他部署との調整も重要になってきそうですね。何か気をつけていることなどはあるでしょうか?
横断のプロジェクトでは、基本的にこちらからお願いすることが多くなります。その時に気をつけていることは、「上流からおさえる」ことと、「プロトタイプを見せながら話す」ということ。
前者の「上流からおさえる」ことは、これまでの職場で大きな組織で培われたスキルかもしれません。チャットで話しかけたり、カレンダーを見て責任者の方が出ている会議に出席したりして、積極的に捕まえに行きます。ちょっと大変そうに聞こえるかもしれませんが、そうやってコンタクトさえ取れれば STORES の方は優しく話を聞いてくれるのであまり負担に感じたことはありません。フラットな組織の醍醐味だと感じています。
後者のプロトタイプを見せながら話すのは、デザイナーの使命だと考えています。何かやりたいことや提案したいものがあれば、作り込んでいなくてもビジュアライズして見せてみる。例えば、ログイン画面にバナーを出す提案をした時も、「こういうバナーで、実際の画面に出ているイメージはこれです」と画面の見た目を見せることですぐにやりたいことを伝えることができました。
——組織がどんどん大きくなっている STORES では大切なスキルですね。これまでの仕事で印象に残っているものはありますか?
現在進行中の、 STORES のサービス同士をつなぎ合わせた基盤を作るプロジェクトです。成り立ちの違うプロダクト同士を接続するので、細かいUXを考える必要がありました。ログイン画面一つとっても、それぞれのプロダクトでログイン画面も、ログイン後の挙動も異なります。それらをオーナーさんが迷わないように設計するのを細部まで考え抜きました。
中長期の目線で設計するPMと膝突き合わせつつ、ボタンひとつといった細部まで考えるのがデザイナーの仕事。ユーザー目線の良いデザインができるよう、見た目だけでなく、オーナーさんに送るメールの内容に至るまで滑らかな設計を心がけています。
意識すらさせない、透明なデザインを目指して
——ユーザー目線のデザイン、滑らかな設計というキーワードをいただきました。木倉谷さんが考える「良いデザイン」とはどんなものなのでしょうか。
ハンマーを使う時、ハンマーの大きさや形を意識することなく誰でも自然に使えますよね。僕が考える良いデザインは、このハンマーのように「透明になっている」、つまりユーザーに意識させないレベルまで感覚に沿ったものです。ウェブの画面で言えば、何の引っ掛かりもなくやりたいことを終えられる画面遷移や、思ったところにあるボタン。
前職で店舗用のハードウェアのデザインをしていた時も、「初めてアルバイトに来た人でも迷わず使えるか」を意識していたので、キャリアチェンジしてもベースは同じなのだと思います。
STORES で働いていていいなと思うのは、SaaSのデザインはオーナーさんの反応をみながらより使いやすくしていけること。ハードウェアのデザインでは、後から変更を加えることはほとんどできません。フィードバックを受けて修正しながらより良いものを目指せる特性は、僕にとっての良いデザインを作りやすい環境です。
さまざまな場所からはたらき、STORES を磨き込む
——今後の展望についても聞かせてください。これから作りたいものや、はたらき方などはどんなものなのでしょうか。
僕は組織ではたらくのが好きです。ひとりでクリエイティブなものを作るのではなく、みんなではたらくことで一人では出せなかったインパクトを出せることに魅力を感じています。これからも STORES の一員として、お商売を始める時にまず思い浮かぶ存在にまで STORES を磨き込んでいきたいです。
その先には……そうですね。僕は今「WORK LOCAL」という地方ではたらく制度を使って京都で働いているんです。関東出身ですが、気に入った街に住んでそこではたらくのが好きで。関西は大阪、奈良、京都に住んだのですが、エリアによって異なる文化やお商売のあり方を感じるのが楽しいんです。いろいろな場所からはたらける特性を生かして土地に根ざした仕事もしていけたらいいなと思います。
(写真・文:出川 光)
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