開発も運用もしないからこそ、準備と決断にこだわる。STORES 決済 のPdMの仕事
STORES 決済 のPdMを務める片桐 瞬さん。今年の春にクレジットカードのタッチ決済の導入という大きなリリースを行ないました。そんな片桐さんのキャリアのはじまりは証券会社の営業。それからどのようなキャリアの経て現在のお仕事に至ったのでしょうか。また、どのようなPdMを目指しているのでしょうか。お話を聞きました。
個人プレーよりチームプレー。自社サービスを手掛ける会社に入りたかった
──現在はPdMのお仕事をされている片桐さんですが、これまでのキャリアはどのようなものだったのでしょうか。
キャリアの始まりは証券会社の営業でした。新卒で証券会社に入って、そこで10年営業を経験しました。その後IT系の企業で新規事業開発を行いました。PdMになったのは、 STORES 決済 の前身であるコイニーに事業開発として入社した後のこと。なので、PdM歴は1年半くらいしかないんです。
──入社時の会社選びの軸や決め手はどんなものだったのでしょうか。
営業をやっていて、やりがいを感じる一方で、個人プレーの仕事に物足りなさを感じていました。チームの名前はあっても全ての仕事がひとりで完結してしまいます。僕はみんなで成果を出すことに興味があるタイプでしたし、個人間の競争にも興味を持てませんでした。
そこで、自社サービスのあるところと上流工程に関われるポジションを中心に会社を探しました。当時のコイニー、現在の STORES 決済 はマーケットの成長性も十分でしたし、日常生活で接するサービスだということも面白そうだと考えました。金融出身の経験や興味を生かすことができると考え、入社を決めました。
──入社された当時と現在とでは、会社の規模も変わりましたよね。仕事にも変化がありましたか?
はじめは事業開発の仕事の一部としてプロダクトをみていましたが、改めてPdMになるとサービスをより俯瞰する視点が身につきました。どういうサービスをオーナーさんやユーザーが求めていて、そのためにはどういう順番で何をするべきなのかを考える必要があるためです。
──営業をやっていた時、個人プレーであることに課題を感じたと話されていましたが、PdMになってからはどうでしょうか?
同じPdMのメンバ-に相談をすることもありますし、エンジニアのみんなとコミュニケーションできるので、ひとりで仕事に向かっている感覚はありません。ひとりで責任や裁量を持つ側面もありますが、エンジニアと話しているととても楽しいんです。
事前準備で成功に導いたタッチ決済の導入
──印象に残った仕事を教えてください。これまでに行ったプロジェクトの中で、記憶に残っているものはあるでしょうか?
最も印象深いのはタッチ決済の導入です。タッチ決済とは、クレジットカードを決済端末にかざすと決済ができるもので、カードを差し込んだり暗証番号を打ったりしなくても良いという利点があります。
決済端末自体はタッチ決済ができるものだったのですが、これまではそれを制御している状態でした。会社が大きくなり新しいメンバーも入ってきて、いよいよ大きなプロジェクトにリソースを割けることになりこれに取り組むことになりました。
ところが、最後に決済手段を追加したのは2018年のこと。この時のことを知っている人もほとんどいない中で、どうすれば決済手段を追加できるのかを調べるところから始める必要がありました。
親しくしている会社の方と勉強会をしたり、クレジットカードに関する国際規格のドキュメントをエンジニアに読んでもらったりと、事前準備に半年もの時間をかけ、その後開発期間を経てリリースを行いました。
まったく新しいものをつくるため、エンジニアはとても大変だったと思います。けれど、事前準備に時間をかけたおかげで問題が起きてもすぐに解決できたり、仕様の変更があればエンジニアが解決策と提案をすぐにまとめてくれたりしてスムーズに開発を進めることができました。
ローンチまで1年半という社内でも異例の長いプロジェクトでしたが、事前準備がきちんとできていたこと、プロジェクト内でのコミュニケーションが活発だったことでリリースに漕ぎ着けることができました。
──実際にリリースをした時はどうでしたか?
リリースされた瞬間は、Slackでその瞬間を共有しました。第1号のタッチ決済が利用されたときは、みんなで「やったー!」と盛り上がりましたね。
さらに、実際に動いているのを確認した時にはやっぱり感動しました。クレジットカードを登録しているスマートフォンでも決済ができるので、感動もひとしお。STORES のオフィスにオーナーさんの商品を STORES 決済 で購入できる場所があり、そこで使ってみるとさらに実感が湧いてきました。
あらためて、決済手段の追加はたくさんの部署が協力して初めてできることだということがよくわかりました。サーバー、アプリ、ウェブ、デザイン、加盟店様へ通知、サービスガイドへの反映など、本当にたくさんの部署をまたいでたくさんの工程があるのです。リリース当日には分刻みのスケジュールでしたが、事前に全て決めておいた通りに進めることができました。これは、関わってくださったみなさんのおかげですね。
作れないからこそ大切にしている「事前準備」と「責任を持つこと」
──片桐さんのお話には、事前準備というキーワードが何度も登場されていますね。
PdMの仕事は、エンジニアが開発に入ったらそこまで多くないのです。一番大切なのは、要件定義や事前準備をきちんと行って、エンジニアが迷いなく作業できる環境を整えること。僕は、開発期間の前と後がPdMの腕のみせどころだと思っています。
また、事前準備を大切にしているのには、もうひとつ理由があります。僕はエンジニアリングの経験がないので、実装に関わることが全くわからないのです。エンジニアとある程度対等に話せる経歴や知識がないので、おそらくエンジニアも開発中に困ったことがあっても僕には相談できる幅が少ないと思います。
開発を助けられる能力がないのならば、前後の準備は他の人よりもきちんとやっておこうと思うから、事前準備を入念に行っているのです。エンジニアの本職に口を出すよりも、要件を漏れなく作っておくほうが役に立てるのではないかと考えてます。
──エンジニアリングを行わないからこそできることもあるのではないかと思います。片桐さんはどう考えられていますか?
サービスを作るのはエンジニアやデザイナーの方たちですし、作った後にサービスが成り立つのはセールスやバックオフィスの方のおかげです。けれど、プロジェクトはリードしなければならない。僕は、作ってくれる人や、運用してくれる人のおかげでサービスが成り立っていることを忘れずに、決断をすることがPdMの役割だと思います。
何かを決めるということは、それに責任を持つということ。何か問題があれば自分が責任を取るのを明らかにしながら、主役のエンジニアの方達が円滑に開発ができるようにサポートしたいと思っています。
──なるほど。何か仕事をする上で気をつけていることはありますか?
小さなことですが、ミスしたらすぐに謝るようにしたり、相手の意見をちゃんと聞くことです。言い訳しないことや意見を尊重することは、相手に対する敬意でもあると思います。
あとは分からないことはなんでも聞くようにしています。エンジニアだけでなく事業責任者や他社にも不明点や正しく理解できてなさそうなところを聞いています。これは準備と意思決定が正しい方向に進むためにも重要だと思っています。
信用されるPdMになるために
──これから目指していることを教えてください。どんなPdMになりたいかや、将来の展望はありますか?
エンジニアに、自分の専門領域のことを理解しているPdMだと思ってもらえるようになりたいです。そうすれば、信頼されるPdMになれると思うからです。
また、長期では、人生でひとつ「これをやったな」と思える仕事をやりたいと思います。できれば、新しいサービスを世の中に発表するという形で。自慢したり、誰かに話したりしたいというよりも、自分のなかで自信になるものができたらと思うのです。その一歩として、STORE 決済 の「信頼されるPdM」になりたいと思います。
(写真・文:出川 光)
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