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社員が安心して使える制度と体制づくりにこだわる。 不妊治療サポート導入の裏側

こんにちは!STORES ダイバーシティプロジェクトで、プロジェクトリーダーを務める高橋 真寿美です。

7月1日、STORES は新たに「不妊治療と仕事の両立をサポートする休暇・休職制度」を導入しました。不妊治療と仕事の両立支援は、近年ますます重要性が認識されているテーマです。2021年2月には次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針が改正され、国も認定制度・企業向けマニュアルの整備など支援を強化しています。また、多くの企業が国の支援に先駆けて「不妊治療と仕事の両立支援」に取り組んでいます。

こうした状況を踏まえると、STORES の制度導入のタイミングは早かったわけではありません。しかし、私たちが何を考え、どんなことにこだわって制度を作り上げたのか、その過程をお伝えすることで、これから制度導入を検討する方々の一助になるのではと考えました。

そこでこの記事では、STORES が不妊治療と仕事の両立をサポートする休暇・休職制度を導入した背景について、詳しくお伝えします!これから制度導入を検討する皆さまにとって、少しでも参考になれば幸いです。

平等ではなく、公平を追求する。STORES の福利厚生導入指針

STORES は2023年8月にダイバーシティ方針を掲げています(参考:STORES のダイバーシティ)。

その上で、ダイバーシティ方針に伴う福利厚生指針として「多様な個人が、STORES で活躍するための壁を取り除くことに投資する」ことを決めています。Equality(平等)ではなく、Equity(公平)。一人ひとりの違いを踏まえて配慮や手段を提供することで、機会へのアクセスを等しくすることを目指しています。

もちろん、この方針の実行には葛藤も伴います。属性・志向・ライフスタイル・知識・スキルなど、一人ひとりの違いを細やかに捉えていくと、そこには無限の違いがあると言えます。その中で、どの壁、どの違いに手当をしていくのかには、組織の価値観が反映されます。結果的に、特定の属性に対して、手厚い支援を行うことも発生します。

つまり、誰かをインクルージョンしようとした結果、他の誰かがエクスクルージョンされていると感じることも起こりうるということです。だからこそ制度導入にあたっては、丁寧な検討とコミュニケーションを心がけています。

不妊治療と仕事の両立にかかる負荷を軽減するための、休暇制度と休職制度

STORES にも不妊治療に取り組む人は一定数存在しています。表には出てきづらいテーマであり、アンケート等で実態を把握することもしていないため、定量的なデータはありません。一方で、ダイバーシティプロジェクトを発足して以来、個人的な相談を受けることが増えています。

厚生労働省によると、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦の割合は全体の22.7%、夫婦全体のおよそ4.4組に1組の割合で存在しています(※注釈1)。現時点で STORES に子どもを持つことを希望する人が一定割合いることを踏まえると、これからも不妊治療と仕事の両立に壁を感じる人は一定数発生し続けることが想定されます。また、一般的に不妊治療は「身体的・精神的負荷」「時間的負荷」「金銭的負荷」がかかると言われています。こうした負荷のもと、不妊治療を経験した方のうち26.1%が、不妊治療と仕事を両立できずに離職したり、雇用形態を変えたり、不妊治療をやめたりしている現状があります(※注釈2)。
注釈1:厚生労働省 不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル p.5
注釈2:厚生労働省 不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル p.6

こうした背景の中、今回 STORES では休暇制度と休職制度の両方を同時に導入しました。「就業と不妊治療を両立する」というニーズと、「一定期間集中して不妊治療に取り組む」というニーズの両方に応えられるようにするための工夫です。

ファミリーサポート休暇の利用目的拡張

  • 目的:身体的・時間的負荷を軽減することで、就業と不妊治療の両立を支援する

  • 内容:既存制度であるファミリーサポート休暇の利用目的を拡張。不妊治療での利用のほか、卵子凍結に向けた通院等に利用できる

  • 対象:正社員 および 契約社員。性別やパートナーの有無にかかわらず、利用可能

  • 日数:5日/ 年  ※有給

    • ファミリーサポートの他目的利用と合わせて上限15日/年

​​プレグナンシーサポート休職制度の導入

  • 目的:不妊治療に一定期間集中して取り組むという選択と雇用の維持の両立を支援する

  • 内容:プレグナンシーサポート休職制度を新規導入。不妊治療での利用のほか、卵子凍結に向けた通院等でも利用できる

  • 対象:正社員 および 契約社員のうち、勤続1年以上の人。性別やパートナーの有無にかかわらず、利用可能

  • 日数:最大3ヶ月  (1人あたり1回まで)※無給 ※積立有給を利用可

こだわったのは、社員が安心して使える制度と環境づくり

制度導入にあたって重視したのは、利用者が安心して活用できる制度と環境をつくることです。そのために、3つのポイントにこだわりました。

① 利用者の心理的負荷と手間が極力低い制度にする

不妊治療は、本人とパートナーのプライバシーに関わることであり、人によっては大変センシティブなテーマです。実際、不妊治療に取り組む社員からは、以下のような声を聞いていました。

  • 「同性ではない上司には、どうしても言いづらい」

  • 「自分が良くてもパートナーが不妊治療をしていることを隠したい場合、自分も職場に言えない」

  • 「ホルモン治療の影響で、どうしても頭がぼーっとしてしまったり、イライラしてしまうことがある。同性の同僚にのみ、不妊治療に取り組んでいることを伝えている」

厚生労働省によると、不妊治療をしている(または予定している)人のうち、職場で「一切伝えていない(または伝えない予定)」と回答した人は47.1%と約半数を占めています(注釈3)。
注釈3:厚生労働省 不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル p.8

これらを踏まえ、STORES では新たに不妊治療に特化した休暇制度を設けるのではなく、もともとあったファミリーサポート休暇の利用目的を拡大する方法を選びました。こうすることで、利用者はファミリーサポート休暇の他の利用目的(家族の看護や介護)と区別されることなく、休暇を取得できます。つまり利用者はプライバシーを守りつつ、制度を利用できます。

管理者の視点で考えると、既存制度と合流することで利用目的が曖昧化し、制度効果のモニタリングや管理が難しくなるというデメリットがあります。しかし、利用者が安心して活用できるというメリットと天秤にかけ、こうしたデメリットは許容しようと決めました。

なお、プレグナンシーサポート休職の利用にあたっては、厚生労働省が活用を推奨する不妊治療連絡カードなどを証明書類として提出してもらうことにしました。他の休職制度(育児休職 / 傷病休職 / 介護休職)でも何らかの第三者による証明書類の提出を求めていることを踏まえてのことです。

② STORES で働き続けることと不妊治療の両立をサポートする制度にする 

プレグナンシーサポート休職の導入にあたって最も悩んだことは、その期間の設定です。最終的に、不妊治療のサイクル・他社事例などを踏まえ、「3ヶ月」に決めました。

大前提として、不妊治療に取り組む期間・サイクル・心身への負担の程度は人それぞれであり、万人に対して完璧にカバーできる日数はありません。その上で極力長く取得できるようにするということも検討したのですが、福利厚生制度の基本方針である「STORES で活躍するための壁を取り除くことに投資する」ことに立ち返り最終判断しました。

また、制度検討にあたっては、不妊治療に取り組む社員からの以下のような声を参考にしました。

  • 「長ければ長いほどうれしいとも限らない。不妊治療を経て授かることができた場合、その後も産休・育休が続くことを踏まえると、なるべく就業と両立しながら治療に取り組みたい」

  • 「一方で、仕事の負荷がない環境で集中して不妊治療に取り組むということも選択肢としてあるとうれしい」

③ マネジャー説明会を開催し、より良い現場でのコミュニケーションを追求する

これは福利厚生に限らず全ての制度導入の際に言えることですが、ハード面(制度設計)だけでは良い制度にはならず、ソフト面(運用 / 現場でのコミュニケーション 等)が伴って初めて良い制度になります。

「不妊治療と仕事の両立をサポートする休暇・休職制度」をより良い形で運用するためには、制度の背景にある基本的な知識とコミュニケーション上の注意点などを、マネジャーによく知ってもらうことが大切だと考えました。

そのため制度導入にあたり、マネジャー向けの説明会を実施しました。以下はそのコンテンツです。

  • 「不妊治療をサポートする休暇・休職制度」導入の背景

    • ダイバーシティ推進に伴う、福利厚生の導入方針

    • 不妊治療の基本知識

  • 不妊治療をサポートする休暇・休職制度の概要

  • コミュニケーションの注意点(具体的なNG言動例 等)

今後は、全新任マネジャーが受講するダイバーシティワークショップのコンテンツに入れることで、全マネジャーが基本知識を有している状況をつくっていく予定です。

対話を重ねながら、多様な人の力が生きる組織をつくっていく

今回の新制度リリースを機に、現在不妊治療に取り組んでいる社員、過去に不妊治療に取り組んでいた社員から、個別にうれしいメッセージをいくつかもらいました。

  • 「すごく助かる。会社から両立を応援してもらえている気持ちになった」

  • 「私も以前不妊治療をしていたことがあるので、不妊治療の負担は実感している。今後は、組織のメンバーとして不妊治療に取り組む人を支える環境をつくっていきたい」

ダイバーシティ推進をしていて思うことは、一歩前に進むごとに誰かの反応が返ってきて、それによってまた新たな気づきがあるということです。前向きな声・疑問の声・不安の声、その一つ一つが次につながっています。

試行錯誤しながら、対話を重ねて前に進む。STORES はこれからも多様な人の力が生きる組織づくりに向けて、一歩一歩着実に活動を続けていきます!

Just for Fun!

デザイン:中間 彩乃
文:高橋 真寿美

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