ロジックからクリエイティブジャンプをみつける—新ロゴ制作の舞台裏
CoineyとSTORES.jpが新しいプラットフォーム「STORES」になったのに伴ってそのCIも生まれ変わりました。この大きな「コト」の裏でどんな気持ちが動いていたのか、そのCIデザインに関わったメンバーにheyで起こった「コト」を聞きます。第二回目は、デザイナー、プロジェクトリーダーとしてこのプロジェクトに参画した、松本隆応(まつもと・たかまさ)さん。
「いや、違うでしょ」のひとことで漂流がはじまった
このプロジェクトは、オーダーらしいオーダーではなく自然な流れで始まったものでした。 2つのブランドをひとつのブランドとして統合しスタートするにはロゴも見直した方がいいという話になったのです。
僕の頭の中では旧STORES. jp のロゴを少しブラッシュアップするイメージでした。なので奈緒子さんに「ロゴどのぐらいでできそう?」と聞かれた時に「来週ぐらいです」と返事したのを覚えています。
ところが、経営陣にそういう案を持って行ってみたら「いや違うでしょ」と。今のSTORESが目指していることを示せるまったく新しいロゴにしたいというフィードバックをもらったんです。そこから自らのnoteにも記した、「漂流」が始まりました。
あたらしいものにアレルギーが出ないように
デザインチームは僕と、荒木さんと、ちゃんたくの3人。オフィスでは離れたところに座っているので 気軽にフィードバックをもらうために作業ができる場所が欲しかった。それで、みんながご飯を食べたりするスペースの真ん中に机でこのプロジェクトの島を作って作業をすることになったんです。
こういう新しいロゴを作る時にはアレルギー反応が起きやすいもの。ロゴを作るプロセスを見てもらえることで社内の納得感を得やすくなるのではないかという考えや、お茶を買いにきた佐藤さんをつかまえやすそうだという思惑もありました。
来てくれた人が話しかけてくれたり、 見にきた佐藤さんが「これいいね」と言った数日後にまた通りかかって「これなんか違う」と言われたこともありましたね。
ロジックではなく、形から生まれたあたらしいシンボル
このプロジェクトのプロセスは、「こんな島があったぞ、やった!」と思ったらその先にまた島が出てくるというような、たどり着くまでどこがゴールかも分からないまさに漂流のような旅でした。
さまざまな案が出尽くしたころ、今のロゴに使われているシンボルが出てきたのは、自宅でこれまでの過程を考えながら書道のようにフリーハンドで形を描いていた時のことです。考えてきたことが全て繋がってストーリーラインできると確信しました。これがダメならゴネるしかないとも思ったのを覚えています。
ところがそれも一筋縄ではいきませんでした。「これでいける」と作ったロゴを3人のオーナーさんに見てもらったら実は3人ともあまりポジティブなリアクションをもらえなかったんです。なので、実はリリースの2週間ぐらい前まで別の案も用意していました。
それでも前に進めたのは、「新しい表現に挑戦しよう」と経営陣が判断してくれたからでした。肯定してもらって勇気が出て、前に進めたんです。heyのCIを決めた経験からも、デザインの価値を決めるのは経営メンバーの気持ちしだいだという実感があったので大胆な意思決定をしてもらえたのが良かった。
みんなの中にあるものを明文化すればそれがいいものになる
振り返ってみると、実は僕はheyのCIを決めた時と同じプロセスを踏んでしまっているんですよね。まずロジカルに組み立てて、「普通に考えたらそうなるよね」というものを出して、ジャンプを求められるという同じ流れになっちゃったな、と。本当は全く違う感覚から入らなきゃいけないんだろうなと考えています。
そのヒントになりそうなのは、最近気づいた、自分が考えていることをアウトプットするのではなくて、すでにみんなのなかにあるものを形にしていけば十分なんじゃないかということ。みんな考え方は微妙に違っていても、サービスに対して共通したこだわりや大切にしているものを持っている。そういった今ある良いものをうまく汲み取りながらも、未来への視点を加えていくことが、良いクリエイティブジャンプへの近道になるんじゃないかなと考えています。
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(聞き手・執筆:出川 光)