『自分らしく生きるためのキャリア選択』。経営者3名が登壇した熱いイベントの一夜をレポート
STORES では、多様な社員が「らしさ」や得意を生かすことができる組織を目指し、さまざまなダイバーシティに関わる取り組みを行っています。中でも、女性活躍は現在の STORES が具体的な数値目標を掲げて取り組む大きなテーマのひとつ。その実現のために、社内向けの取り組みだけでなく社外への発信も積極的に行っています。
今回の記事では、2024年6月19日に行われた、対談イベント『自分らしく生きるためのキャリア選択』をレポート。株式会社マネーフォワード グループ 執行役員 CHO (Chief Human Officer)、DEI (Diversity, Equity & Inclusion) 担当の石原 千亜希さん、株式会社スープストックトーキョー 取締役社長の工藤 萌さんをお招きし、STORES 株式会社 取締役 VP of People Experienceの佐俣 奈緒子と共に、キャリアにまつわるさまざまなトークの様子をお届けします。
リアルとオンラインでお届けしたイベント。会場は女性でいっぱい。
イベントは、会場で直接トークセッションを聞くオフラインと、zoomによる配信のオンラインで行われました。合計の参加者数は100名以上。オフラインの会場を見渡すと女性の姿が多く、このテーマへの関心が伺えます。
この日のテーマは、大きくわけて4つ。
・自己紹介、小さい頃のエピソード
・働き始めた頃、どのようなキャリアを思い描いていたか
・キャリアの転機になったと思うできごとは
・自分らしく生きるためのキャリアを考えた時に、今後トライしたいことは
本記事では、中でもこのイベントのメインテーマである、「働き始めた頃、どのようなキャリアを思い描いていたか」「キャリアの転機になったと思うできごとは」「自分らしく生きるためのキャリアを考えた時に、今後トライしたいことは」にフォーカスをあて、印象的なトークをご紹介します。
働き始めた頃、どのようなキャリアを思い描いていたか
自己紹介では、親近感を感じる意外な一面についてお話くださり、盛り上がったところで出てきたのが「働き始めた頃、どのようなキャリアを思い描いていたか」というテーマ。キャリアのスタートを振り返りながらお話しいただきました。
石原「私は、幼い頃から『手に職をつけて欲しい』という教育を受けており、何かしらのハードスキルを身につけなければいけないという考えを持っていました。そのため、大学3年生くらいから会計士の勉強を始めて資格を取得し、最初のキャリアとして監査法人を選びました。比較的安定したキャリアを選んだはずが、当時の監査法人で初日に言われたのは『全員に定年まで働いて欲しいと思っているわけではない』という厳しい言葉。この言葉によって、自分の価値をどう社会に還元するかを意識し始めました」
工藤「私が就職活動を行ったのは就職氷河期と言われる2004年のこと。新卒で資生堂に入社し、入社できたことに満足してしまった感覚があって、まだキャリアを具体的に描けていませんでした。3年目でジョブチャレンジという社内転籍の試験を受けるまでは、まだやりたいことを描いたとは言えなかったと思います。一方で、地方で営業をしながらコツコツ成果を積み重ねる喜びを感じながら営業の仕事を楽しんでいました」
佐俣「私は新卒でPayPalに入社しました。学生時代にシリコンバレーに行ったことがあったことから、なんとなくインターネットの会社で働きたいという思いを持っていました。一方でいつか起業したいという思いは強く、当時の上司に『3年で辞めます』と伝えていたほど。まだ事業の内容は固まっていませんでしたが、インターネット関連のことをやりたいなと思っていました」
3名とも謙虚な語り口で当時を振り返りますが、それぞれが現在につながるキャリアを当時から歩み出していたことがわかります。
キャリアの転機になったと思うできごとは
前段のキャリアの話が盛り上がり、自然な流れで移った次のテーマは「キャリアの転機になったと思うできごとは」。キャリアだけでなく、ライフステージの変化も迎え、どのような意思決定をしたのでしょうか。
石原「今後の自分の人生とキャリアを考えた時に、子供が産めるならば1人は欲しい、それならば20代の後半で1度転職して、ある程度認められてから産休に入りたいなと思っていました。そこで27歳くらいの時にマネーフォワードに転職。これにより、“それまでの先を見据えてそこからブレイクダウンして計画を立ててキャリアを築く考え方”から、“自分が想像もしていないチャンスを楽しむ考え方”にシフトすることができたことが、キャリアの転機になりました。実際に入社後は、当時200人規模から一気に1000人規模に組織拡大する変化を経験したり、未経験の経営企画の仕事に向き合ったりすることができました。また、マネーフォワードが上場しIRを任されてからは、苦手なことに長期間向き合い、インプットと経験を重ねることで勘所をつかんでいくという初めての経験をすることができました」
工藤「私の転機は2つあります。1つ目は、資生堂本社でブランドのマーケティングをしていた時、研修で外資のマーケティングノウハウに触れたのがきっかけで夜間のMBAに通うことに決めたことです。昼間は猛烈に働き、夜は眠い目を擦ってMBAに通うという生活をしていると『夜インプットして、昼間アウトプットする』というサイクルができあがりました。それを楽しんでいたことがその後の社長直轄プロジェクト抜擢のきっかけにもなり、結果キャリアの転機となったのだと思います。もうひとつは、ブランドマネージャーをやりながら36歳で第一子を産むという選択です。出産を機にマーケティングが持つ強い力を、大量生産・大量消費を促さず、50年、100年後の社会を作ることに使いたいと考え、産休・育休中に直接的に社会課題解決を行っているユーグレナへの転職を決めました。出産というライフステージの変化でありながら、キャリアへの考え方もキャリアそのものも変えてくれた転機だったと振り返っています」
佐俣「私の転機は、まず自身で会社を立ち上げたこと。会社を立ち上げた理由には、やりたいことが見つかっただけでなく、結婚を期に家計を支える役割を夫と交代したという理由もありました。それまで私が企業で働いて、夫がやりたいことのための修行のようなことをしていたので、その役割を交代することにしたのです。実はその後夫が勤めていた会社を辞めたため、二人ともほぼ無収入状態になって家賃が払えるかギリギリの生活をしていたこともありましたが、『何かあったら学生時代に借りていた数万円のアパート生活に戻ればいい』と考えて乗り切ることができました。次の転機は第一子が生まれた時。当時の『自分一人で頑張って、体力が尽きたら家に帰る』働き方から、チームでの働き方にシフトするきっかけになりました」
それぞれのキャリアの転機。「起業」「転職」として経歴に記されるキャリアチェンジの背景には、単なる職歴では表せられない大切にしたい生き方やライフステージの変化があったことが明らかになりました。その等身大のエピソードに、会場にいらした方々も、時にメモを取ったり大きく頷いたりと深く共感している様子。
自分らしく生きるためのキャリアを考えた時に、今後トライしたいことは
惜しまれながら迎えた最後のトークテーマは、「自分らしく生きるためのキャリアを考えた時に、今後トライしたいことは」。
石原「私は今、CHO (Chief Human Officer)として人事をしており、ここ数年で社員の年齢や国籍の幅が広くなってきているのを肌で感じています。今後の『トライ』としては、人事として、マネーフォーワードを『多様な人を採用する』するだけでなく、外国籍や女性であることなどの属性でポテンシャルが制限されないような仕組を更に整備していきたいですね。特に女性は、自分で自分の可能性にブレーキをかけている人が多く、キャリアに前向きな人が多いように見えても、サーベイをとってみると男性よりも自分の可能性に蓋をしがちであることがわかっています。時には家事の手を抜きつつプライベートもやりくりしている自分の経験も活かして、女性が一歩前に踏み出すお手伝いができたらいいなと思っています」
工藤「私はまだ社長になったばかりで今後のことを語るのにはためらいがありますが、まずは社長をしながら9月に控えている出産を迎え、子供を育てるのが、私にとっての大きな『トライ』になると思います。今回、私が妊娠したことに対して本当にたくさんの取材依頼をいただいて、改めてまだ事例が少ないのだなと実感しています。私のようにごく普通の新入社員からキャリアを歩み始めた人でも、たくさんのキャリアの選択肢があるのだというひとつのケースになりたいと思います。また、社長を務めているスープストックトーキョーを、人生の中で訪れる様々なライフステージの変化や境遇、チャレンジに対して、それを理由に仕事をあきらめないで済むような、自分の人生を豊かにすることを躊躇させない環境をつくれるように成長させていきたいと思います」
佐俣「今日はお二人のお話を聞きながら、改めて『私はあまりキャリアについて考えてこなかったな』とこれまでを振り返っていました。そんな私の『トライ』ですが、会社を始めて12年経つので、まずは投資家の方々にしっかりとリターンを返したいと思っています。もうひとつの『トライ』は、プライベートの活動と事業を通して特に女性経営者を支援することです。個人的に若手起業家向けのゼミをもっていますが、女性経営者の情報へのアクセシビリティに課題を感じることがあります。また、 STORES のサービスを使ってくださる経営者の方々の中にも多くの女性経営者の方がおられます。STORES というサービスやテクノロジーを通して、多様な生き方を支援できたらいいなと思っています。」
会場からはこの後の質疑応答でも絶え間なく手があがり、子育て、転職などさまざまなテーマでお話が盛り上がりました。その後の3名を囲んでの懇親会では来場してくださったお客さま同士で情報交換する場面も。「自分らしく生きるためのキャリア選択」が、まさにこの場から始まったという方もいたのではないでしょうか。
STORES はこれからも、ダイバーシティーに関わる取り組みの一環としてさまざまな発信やイベントを行っていきます。これからの企画も、どうぞお楽しみに!
写真・文:出川 光
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