ビジネスとデザインのいいバランスを見つけよう。STORES 決済 とみてきた6年間
コイニー株式会社に入社し6年間、STORES 決済(旧:STORESターミナル )をデザイナーとして支えてきた吉田真実(よしだ・まみ)さん。日本全国を旅するようにさまざまなところで積んできたキャリアや、現在の働き方に大きな影響を与えたできごとなどを聞きます。
テレビ局の美術のアルバイトからウェブディレクターに
——吉田さんの入社は2015年なので、社歴6年のベテランですね。
そうですね。まだ経営統合してheyになる何年も前、私が入った頃のコイニー株式会社(以下、コイニー)は、デザインチームはマッツさん(松本隆応さん)との二人きりでした。プロダクトを作るチームにはまだまだ人がいなかった時ですね。
——それまでのキャリアはどんなことをされていたんですか?
最初は福岡のテレビ局で美術のアルバイトをするところから始めました。番組で使うフリップなどを作る仕事です。もともとテレビ局で働いてみたかったので楽しい仕事でした。でも地方のテレビは1年が終わるとまた同じ企画を繰り返すんですよね。少し飽きたところで、紹介してもらったウェブ制作会社に転職しました。最初は福岡で、その後京都で、最後は東京で。色々な受託制作会社でウェブデザイナー、ウェブディレクターの仕事をしました。最初は指示を請けて納品しては短時間で掲載が終了するという、バナーやウェブページの制作が多かったですが、ディレクターになってからは自分で提案してモノを作る楽しさを知りました。
——東京で働くのは福岡や京都とは違いましたか?
最初の会社では「東京の人はやっぱり冷たいな」なんて思っていましたね。忙しい会社だったのもありますが、「助け合いの精神とかないの!?」と当時はショックすら受けました。居心地のいい会社を探してジョブホッパーを繰り返していましたが、現在はコイニーに落ち着いたというわけです。
言えなかった機能開発
——コイニーで働いてみて印象に残っていることはありますか?
私の働き方を変えたふたつのできごとがありました。ひとつは、まだコイニーに入ってまもない頃、同僚のデザイナーが1年かけて作った機能がリリースされずにお蔵入りしてしまったというちょっと悲しいできごとです。本人は思い入れがあった機能だったのですが、「作りたいもの」と「ユーザーが必要なもの」とが離れていたんですよね。私は隣の席にいてそれになんとなく気づいていたのに、遠慮してはっきり言うことができなかった。悲しい思いをしている同僚をみて、言いづらいことでも気づいたときにしっかりと伝えなければ良いプロダクトはできないと心に誓いました。
さらに、当時ディレクションする人がいなかったこともその原因になったのではと考えて、ディレクターをしていた経験を生かしてそういう役割を積極的に引き受けるようにしました。今も、デザインプログラム・マネージャーのような動きをしています。
納得してみんなで進めると手も早い
——もうひとつはどんなことなのでしょう?
よく考えて議論して、みんなが納得してから作るということです。はじめのきっかけをくれたのは入社した時から一緒に働いているマッツさんの仕事のプロセスでした。こんなに考えるのかと驚きましたね。受託制作の経験が長かった私は、作る理由を考える前に手を動かすことが当たり前になっていたことに気づきました。今から作る目の前のことだけでなく、それが1年後3年後どうなるかまで考えて作る。今思えば当たり前ですが、当時はそれが日常的に行われる環境に驚き、そのプロセスや考え方をマッツさんから学びました。
——納得して作ることと、考えずに作ることにはどんな違いがあるのでしょうか?
これはデザインの話だけでなく、スケジュールやプロセスの「納得感」も含まれますが、納得してから作り始めることで、最終的なアウトプットが格段によくなるのが明らかです。議論にどれだけ時間がかかっても、納得するまで話し合い、そこからスタートすることでゴールもプロセスもわかっているので悩む時間も認識合わせの時間も少なくなるんです。その後は担当デザイナーに安心して一任できる。
マネージャーのポジションだと、「まーいいからやってよ」というシーンはよくあると思うんですが、なぜそこで「いいからやってよ」になるのかも、納得するまで伝えてたりします。
ビジネスとデザインのいいバランス
——そういう美学を持っているデザイナーが集まっていると、ビジネス的によいことと、見た目の美しさなどで意見が割れたりすることはありませんか?
それは本当によくありますね。それに対する私の考え方は、「いいバランスをみんなで見つけよう」ということ。デザインの視点もビジネスの視点もどちらが正しいということは無いと思います。デザイナーとして見た目の素敵なデザインを優先したくなる気持ちはわかるけれど、私たちのお客さんであるお商売をやってる人たちってそんなに素敵なものばかりに目が行くわけではないんです。よくある例えですが、ユニクロは、ブランディングはきれいなビジュアルを使っているけれど、チラシには、999円!とドーンと書いてある。そのほうが買いたいという気持ちになるターゲットもいるからです。お店をやっている人は、お店を運営するシステムには1円でも安いものを使いたいと思うのはごく普通の心理であるし、それをしっかりアピールする必要があるときもある。つまりデザインの使い分けが大切という話をしています。
あえて「お金儲けをしていきたい」って言います
——これからやっていきたいことはありますか?
ものすごく誤解を呼びそうな言い方になってしまいますが、あえていうならば、お金儲けをしたい、と言いたいです。私たちがお金が儲かってるということはお客さんが儲かっているということの指標になります。自分たちが大きくなることがお客さんの役に立てることだと感じています。
デザイナーである前にビジネスを進める社員のひとりとして意識ができる人になってほしい。そのためにお商売をする人の視点に立ち、お店に利益をもたらすには?大きくするには?と考え、お商売を自分ごとにするために「お金儲けをする」という言い方をしています。その視点があると「作りたいもの」と「必要とされるもの」を冷静に判断できると考えています。
そんな心配しなくとも、勝手にどんどん成長してくれるメンバーと信頼関係を保ちながら仕事ができているから、きっと大丈夫でしょう。
——チームメンバーのお話が出たところでそう言えば。最初にお話にあった、「東京の人は冷たい」というのは、今の職場になって払拭されたんでしょうか?
コイニーに入って、さらにheyになって仲間がもっと増えて、いいチームメンバーに恵まれてすっかりそんな考えはなくなりました。あの時の考えは、誤解だったみたいです(笑)
吉田さんのお気に入り:GRILL BURGER CLUB SASA
とにかく美味しい!ボリューミー&ジューシーですがペロッと食べられます。月ごとの変わり種ハンバーガーもおすすめですが、ホットサンドもおすすめ。
(写真・文:出川 光)
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