ドラスティックな業務改革で25%の工数削減。 STORES のQAマネジャーが行ったこと
STORES のマルチプロダクト化とそれに伴うラインナップの充実は、その品質を担保するQA(品質保証)の仕事を大幅に拡大させました。さまざまなプロダクトのQAを社内で行う体制づくりと、その工数削減のための業務改革を行ったのは、マネジャーを務める金子なづきさんです。持ち前の努力と粘り強さで削減した工数はなんと25%。さらに現在進行形でさまざまな業務の改善に取り組んでいます。お話を聞きました。
組織拡大を経て20名が在籍するQAチーム
──本日はよろしくお願いします。まずは、金子さんがマネジャーを務めているQAチームについて教えてください。
2022年冬から私がマネジャーを務めているQAチームは、現在業務委託のメンバーを含めて20名が在籍しています。これまでは、和気あいあいとした雰囲気のチームでしたが、最近ではいい意味でシビアな雰囲気になってきていると感じます。仲が良いだけでなく、やらなければならない業務をいかに行うかにフォーカスし、効率的な働きを大切にするようになりました。また、プロダクトそのものや開発プロセスの改善も視野に入れQAを行うため研鑽しています。
──QAチームの業務範囲について教えてください。 STORES のさまざまなプロダクトの中でどのプロダクトのQAを行なっているのでしょうか。
担当しているのは STORES ブランドアプリ 、 STORES レジ 、STORES 決済 です。以前は STORES 決済 のQAのみを行なっていましたが、 STORES のプロダクトラインナップの増加に伴い担当プロダクトを増やしてきました。業務の拡大に伴い、QAチームも採用を行い拡大してきました。
社内にQAがいるからこそできる仕事の模索と
マルチプロダクト化に伴い出てきた課題
──この取材では、QAの業務改革についてお話を伺います。QAプロセスを見直し、コストの最適化を行なったとのことでしたが、以前のQAの業務にはどのような課題があったのでしょうか。
STORES のQAは常に変化しているので、どこからを「以前」とするのか定義が難しいですが、言うなれば「依頼に基づいて業務を行うチーム」だったと思います。あくまで依頼されたテストを行っている状態からなかなか抜け出せない状態が続いていました。
しかし、開発チームに指示をもらってテストを行うだけでは、社内にQAがいる意味がありません。外注ではなく社内でQAを行うからこそ出せる価値が何なのかを考えるようになりました。
また、人員不足による工数の削減も大きな課題でした。担当プロダクトが増えたことで、チームが拡大してもなお、プロダクト数の増加に工数が追いつかなくなっていたのです。採用にも時間がかかる上、メンバーの育成とQA業務を同時に行うには圧倒的に工数が足りず、生産性を上げる必要がありました。
ドラスティックな業務改革で、品質を上げながら
25%の工数削減を実現できたわけ
──これらの課題をどのように解決したのでしょうか。
まず、テストを依頼される前の段階から開発プロセスに関わり、専門的な視点で意見を出すことにしました。不具合を指摘するのではなく、不具合が生まれづらい仕様などを提案することで、「依頼に基づいて業務を行うチーム」からの脱却を図りました。
また、大規模な工数削減にも踏み切りました。シニアマネジャーのみなさんが業務効率化や工数削減のために動き出しているのを見たことでQAチームもそれに続くようにして業務改革を始めました。
具体的なやり方の参考になったのは、VP of Product兼VP of Engineeringの佐藤大介さんがモバイルアプリの工数削減のための業務改革プロジェクトで現場に入り業務改革を行った時のこと。全体の業務改善プランを策定した上で、スケジュールや動き方を決めていく段取りや、その場しのぎの工数削減ではなく、中長期的にも効果のある本質的な改善を行う姿勢などを見て、「QAの場合はどうすれば良いか」をじっくり考えることができました。
──実際に行なった業務改善について教えてください。
具体的には、 STORES レジ のQAにおける業務改善を行いました。まず、 これまで4名体制で行なっていたQAの工数を25%削減し、3人で行うことをゴールに設定しました。
主な改善内容は、変更をプログラムに加えた際などに修正した箇所以外に影響がないかを確認する、リグレッションテスト数の削減です。例えば、OSのバージョンが上がった時のQAでは、機能差分のない箇所や、重要ではない部分のリグレッションテストの数を減らしました。また、全体のテストをUIまわりと処理まわりに分類し、端末の種類に依存しない処理まわりのテストを削減するなど全体的なリグレッションテスト数の削減も行いました。
さらに、GitHub Issuesでの記述方法を統一し、運用フローを効率化する取り組みも開始。これまでは書く人によって書き方や内容、粒度にばらつきがあるためそれを確認する人に負荷がかかったり、正しい記述のための教育コストがかかったりすることが課題になっていましたが、この流れを決めることで工数削減と属人化の防止ができました。
これらの改善により、設定したゴールである25%の工数削減を達成。現在は、さらなる工数削減のため、モバイルスプリントのリグレッションテスト数を削減する試みを行なっています。可能であれば来年にはテストの自動化に踏み切りたいと考えています。自動化にあたっては、ハードウェアなど自動化できない部分をどのように扱うかなどまだまだ課題がありますが、これが叶えばさらなる工数の削減が可能になるはずです。
──工数削減だけでなく、業務そのものの品質が上がったことが伝わってきました。金子さんは、 STORES のプロダクトの品質基準も策定中だとか。
これまでは、プロダクトをリリースするためのリリース基準がなかったため、それぞれの基準でテストを行っていました。少人数のチームであればそれでも基準を揃えることができていましたが、チームが拡大したこと、担当するプロダクトが増えたことにより一定の基準が必要になりました。そこで、リリース基準を定め、それに合わせてテストを行うことを目指しています。これにより、 STORES のプロダクトの品質が安定するだけでなく、不要なテストの削減も実現することができるはずです。
マネジメントと業務改革のバランスを取るコツは
メンバーにタスクを丁寧に渡すこと
──マネジメントについても教えてください。チーム拡大によるマネジメントと業務拡大のバランスをどのように取っているのでしょうか。
マネジャーは、自分の仕事だけでなく、必要な時にトラブルの対応をしたり、QAの仕事全般の把握をする必要があります。マネジメントと幅広い業務のバランスを取るため、私自身の仕事の委譲を行っています。
と言っても、これまで担当してきた作業を一気に減らすのは難しいので、少しずつメンバーにできる作業を渡してきました。また、同時に STORES レジ の改善をプロジェクト化し、チームで行える体制を組みました。
──これまでご自身で行ってきたタスクをメンバーに渡すのは簡単なことではなさそうです。
チーム拡大に伴い、メンバーの経験値に幅が出たので、私自身のタスクの渡し方を見直しました。これまでのメンバーは経験値があって自律的にタスクを行うことができましたが、最近ジョインしてくれたメンバーの中にはこれから育っていく人も多くいます。そのため、ひとつひとつのタスクをお願いする時にゴールと作業内容を丁寧に説明することを心がけるようにしました。今後、さらに多くのタスクをメンバーに渡していくことができればさらなる効率化ができると考えています。
── STORES のプロダクトラインナップが増えていくのに伴い、QAでも新たな人材を採用していくと伺っています。チームメンバーとして一緒に働く人に求めることを教えてください。
今のチームを見渡してみると、今の現状に満足せず、さらに上を求める人が多いように感じます。今がこれまでの最高のパフォーマンスを出せる状態だったとしても、「まだまだいける」と考えてアイディアを出したり、改善策を考えたりできる、自己成長を続ける人と働きたいと思います。チームが拡大したと言っても、まだまだ小規模で担当するプロダクトが多いため、誰かが教えてくれるまで待つ方にとっては、少し厳しい環境なのではないでしょうか。
──これからのQAチームをどのようなものにしていきたいですか?
感謝を忘れないチームでありたいと思います。QAは、社内のさまざまな部署の方と関わる仕事です。例えば仕様について説明してくれるということは、その人が時間を使ってくれているということ。感謝し、それに対して私たちの仕事で事業に貢献できる存在でありたいです。
そのためには、常に新しい技術や知識を取り入れる柔軟さと、今の STORES に合ったQAのあり方の模索が必要です。チームメンバーと共に、さらに STORES に貢献できるQAを目指していきます。
デザイン:石橋 講平
写真・文:出川 光
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