どうすればこれからの商売はうまくいく?僕なりの答えは”お客さんを異常に満足させること”
STORES では2022年より、ファーストリテイリングやファミリーマートなど名だたる小売企業を牽引してきた澤田 貴司さんを社外取締役に迎え、多様な視点でアドバイスをいただいています。そこで今回は小売経営のプロフェッショナルである澤田さんに、社外取締役を引き受けていただいた理由や、経営者かつ商売人として大切にされていることを聞きました。(聞き手:取締役 VP of People Experience 佐俣 奈緒子)
社外取締役を引き受けた理由は “人”
──澤田さんには、2022年から STORES の社外取締役を務めていただいています。改めて STORES のどんなところを面白いと思って引き受けていただいたのでしょうか。
まずは「人」ですね。代表の佐藤さんが考えていることを聞いた時に「この人は面白い」と思ったんです。それに彼がこれから挑戦したいことにも強く共感しましたね。あとは、信頼している方から佐藤さんを紹介いただいたのも理由のひとつとしてありました。
── ありがとうございます。最初に佐藤とはどんな話をされていたのですか?
「日本の流通は巨大だけれど、近代化が遅れている」という課題感や「それをアップグレードしていきたい」と言う彼の思い、あとは「STORES はそこの役に立っていきたいんだ」というこれから STORES が向かうところについて話をしましたね。コンビニ然り、今や小さな会社や商店があらゆるものをアップグレードして、巨大なインフラになっているじゃないですか。そんな社会の変化を踏まえ「これから STORES がどこを目指していくのか」を当初から話していましたね。
現場がすべて
── STORES を利用いただいている事業者の方には「小売業」の方が多くいらっしゃいます。そこで、ファミリーマートやユニクロなど「小売」のプロフェッショナルである澤田さんが、経営において大事にされていることをお聞きしたいです。
現場とお客さんがすべて、ですね。今日もお客さんのインタビューに行ってきたばかりで、明日も県外のお客さんの所に行きますよ。
── 現場がすべて。これは私たち STORES の経営メンバーにもよくお話してくれますよね。
そう、現場に全部あるんです。ユニクロ時代には柳井さんの姿を見て、経営において「ビジョナリーであること」かつ「常に現場を理解していること」が大事だと学んだのです。2030年の話をしていると思ったら、突然「おーい、渋谷店どうなってる?サイズ切れてるぞ!」と未来と現場を常に行ったり来たりしながら話をされるんですよ。柳井さんのように成長意欲の激しい人と、毎日一緒に目標を追いかけて、尚且つ負けないようにするためには、自ら現場を理解しに行かなければいけない、と強く思いましたね。
── 「現場を理解すること」は、どの企業でも、変わらず大事にされていることだったのでしょうか。
ユニクロ時代もファミリーマート時代も同じでしたね。僕自身も店舗で数週間の研修をしたり、時間をつくって加盟店さんの店に行ったりしていました。現場をまわって、顧客の目線で、そして店舗で働く人の目線でリアルを理解する。現場を分かった上で経営判断をし、優先順位を決めていく。これがすごく大事だと思っているんです。
現場に行くと、色んなことに「どうして?」とクエスチョンマークが浮かんで、知りたくなりますよね。そこに大きな答えがあるんです。だからどこの会社にいても、まずは現場に行っちゃうんですよ。
── 澤田さんはどこでこのスタイルを学ばれたんですか?
僕にとっての最大のエポックは、32、33歳の頃にイトーヨーカ堂の伊藤雅俊名誉会長に出会ったことですね。この出会いは僕にとって大きかった。伊藤さんの何がすごいって、ずっと現場に行ってるんですよ。
そんな伊藤さんに「澤田くん、行こう!」って呼ばれて、一緒に店舗をまわっていると、移動中もずっと「さっきの店どうだった?」って僕に質問するんです。僕が感想を話すと、それを全部メモにとっている。そういうことが何度もありました。
そのあと会社に戻ると、すぐさまチームメンバーを呼んで「店ではこういうことになってるんだけど、こう変えていこう!」って動き始めているんです。現場に行って、発見して、すぐになおしていく。全てはお客さん、お店の方のために。それがすごくかっこいいなと思ったんです。現場もお客さんもこんなに大事にしながら、巨大なインフラをつくっている。そんな伊藤さんを見て「自分もこの人みたいになりたい」と思いましたね。それが僕の転換点です。
商売は、楽しい
── 澤田さんの考える「商売人」とはどんな人ですか?スタートアップではあまり「商売」は語られないなと思い、ぜひお聞きしたいです。
端的に言うと、「お金儲けの上手い人」。例えば「Aは売れないな」と思ったら平気で譲ったり変えたりするみたいな。それで次は別のBを売ってみるんだけど「でもこっちのCの方が良いな」と思ったら、平気でそっちに変えちゃう。常に目を光らせて、常に俯瞰して「これが一番社会のためになっている」「これが未来の日本のあるべき姿だ」と思ったら、そこにピボットして、インベストしていく。「ここだ」というゴールに向かってやり切る、そのために必死に稼いでいるような人が「商売人」だと僕は思いますね。
── 商売において、変わること、変わり続けることが重要ですか。
そうですね。変わり続けることをいとわない。そして「ここに行くんだ!」と目指すゴールが見えた瞬間に、人員を張って一気に進めていくのが大事なんじゃないかと思いますね。僕はそんなふうにドラスティックに物事を変えてきたので、意見書をもらったこともありましたよ。でも、変わり続けながらその時々で必死にやり切ることで、お客さんにもっと喜んでもらえたり、より成果が出たりするじゃないですか。僕はこれが面白いと思っているし、みんなにも面白いという感覚になってもらえたら嬉しいですね。
どうすれば「これからの商売」はうまくいくのか
── 社会も大きな転換点を迎えています。これからの時代、どうすれば商売はうまくいくのでしょうか。
僕なりの答えですが、時代が変わっても「お客さんを異常に満足させること」それに変わりはないと思います。お客さんを本当に幸せにしたいと思って商売ができるかどうか。その軸さえ通ってれば、永続性はあるんじゃないでしょうか。それがないとサステナブルな感じがしないし、短期で終わってしまう気がします。
商売はすごく面白い。だって、お客さんが「あれ、良かったよ」って喜んでくれるのはすごく嬉しいじゃないですか。その商品を僕らがつくってるなんて、なんだか感動しちゃいますよね。
もちろん、経営者は数字でしか評価されないし、逃げ場もない。でも、うまくいったら全部リターンを得られる。こんなに面白いことは他にはないですよ。だから僕は商売が好きだし、ずっとリングに上がっていたいんです。
── そんなふうに、日々商売をされている事業者の方が、STORES のお客さんでもあります。
お客さんの会社が成長して「それ、実は STORES があったからなんです」って言われたら、たまらなく嬉しくないですか?
STORES を使えば、経営が進化してうまくいく。自分たちのやりたいことを達成できる。そうなったら良いですよね。どんどん経営がチューンナップされて、バージョンアップする。そんなデファクト・スタンダード(業界の標準)になってほしいんです。
僕は、パッケージを提供して「以上、終了!」っていうのはすごく寂しい。 STORES が提供するネットショップもPOSレジも予約システムも、もちろん便利なんだけど、単なる便利なツールではなくて、それをアナライズしながら、お店の経営を進化させていく。STORES がそんな存在になればすごく強い。他にそこまでやっているところはないし、選ばれる理由になります。
だから、ここからもっと上を目指してほしいんです。時間も人手も必要だし、めちゃくちゃ大変だろうけど。これからの STORES には、そこにチャレンジしてほしいですね。
デザイン:石橋 講平
写真:荒木 脩人
文:田中 絵里
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