STORES 、その展望と現在地──倉岡寛インタビュー
STORES 予約 の前身であるCoubicを立ち上げ、現在プロダクトマネジメント部門のVPoPを務める倉岡寛さん。あらためて、お商売のデジタル化を支援する「STORES」の各種サービス の展望と、現在の課題について聞きました。
スモールビジネスの課題をまるっと解決する
──今日は改めて、STORES の魅力と今後の展望について聞きたいと思います。まず、STORES は、何を解決するサービスなのでしょうか。
STORES は、スモールビジネスを展開するオーナーさんの課題をまるっと解決するサービスです。
STORES には現在、ネットショップ開設サービスである STORES 、ネットショップとひとつになったPOSレジサービスである STORES レジ、お店のキャッシュレス決済をかんたんにする STORES 決済、そしてオンライン予約システムの STORES 予約 があります。
これらは全てスモールビジネスのオーナーさんのお商売の課題を解決するものです。ひとつ、例をあげましょう。僕が前身のCoubicを立ち上げた STORES 予約 は、予約にまつわるスモールビジネスの課題を解決するサービスです。
電話予約は、予約をする側も、お店で予約を取るオーナーさん側もお互いに不便ですよね。例えばマッサージを受けに行って、途中で「電話をとるので待っていてください」なんて中断されたらちょっと残念な気持ちになってしまう。これをネット予約にすれば、電話に出れないことによる取りこぼしもなくなるし、お客さんの体験も悪くならない。STORES 予約 を導入することで、オーナーさんのお商売の課題がひとつ解決できるのです。
さらに、STORES 予約 で事前にお客さんに質問に答えてもらうことで、より良いサービスを提供するための準備ができます。
こういった、お商売の裏側にある煩雑な業務を効率化し、オーナーさんの課題を解決することで、よりお商売に集中ができ、持続可能なものにしていくのが、STORES なのです。
機会損失を防ぎお商売を楽にする
──ひとつめにお話いただいた、より効率化したり、機会損失を防げたりというのはなんとなくイメージできていたことでしたが、顧客情報を生かしてオーナーさんが提供するサービスを向上させることもできるんですね。
そうなんです。最近通い始めたキックボクシングジムのオーナーさんが STORES 予約 を導入してくれたのですが、この顧客の情報を事前に入手できることが役立っていると話していただきました。そのジムでは体験レッスンの予約をする時にお客さんのニーズをヒアリングするらしいのですが、「ダイエットしたい」「技を磨きたい」「体力をつけたい」などのニーズを得られるだけでなく、簡単にスタッフ全員で共有できていることがとても良いそうなんです。予約した顧客の情報がわかっていることで、心の準備ができることも、顧客管理の良さであるという好例だと思います。
まるっとできることに価値があるから
──STORES であることで、オーナーさんに選ばれている実感はありますか?
大いにあります。オーナーさんが抱えている課題はひとつではありません。店舗の来店予約をとりながら、店舗で物を売り、ネットショップもやっていてという方は珍しくないからです。そこで発生するそれぞれの課題に、「予約管理はAのサービス、決済はBのサービス、レジはCのサービス......」と別々のサービスを管理するのはめんどくさいのです。STORES が選ばれている理由は、それらの窓口を統一して、まるっと課題を解決してくれることにあります。僕自身、 STORES 予約の前身であるCoubicをやっていた時に、このニーズにすでに気づいていました。現在は、それがやっと実現できている状態なんです。
──ちょっといじわるな質問ですが、大手企業が競合になることは脅威ではないのでしょうか?
あまり意識したことはないですね。STORES(ネットショップ) も、STORES 決済 も、STORES 予約 も10年ちかくオーナーさんに向き合って大小さまざまな機能改善をおこなってきました。本当にオーナーさんの業務やニーズを理解し、それをプロダクトに反映させるためには、資本の力だけでなんとかできるものでもなく、積み上げてきたナレッジなども重要な要素です。文化として磨き上げてきた管理画面やオペレーションは簡単に真似できるものではありませんよ。
──なるほど。それでは、スタートアップではどうでしょうか?
もちろん、プロダクト力が高いプレイヤーがいることは確かです。そこで、先ほどのプラットフォームであることが強みになると考えています。レジがあり、決済があり、ネットショップがあり、予約があること。そうやってまるっとすべて解決できることが優位性になると考え、それを磨いているところです。
STORES の現在地と、課題
──現在 STORES に課題があるとしたら、何でしょうか。
先ほどお話しした、「まるっとできること」をさらに推し進めるためにサービス間の連携が課題になってくると思います。それぞれ単独の事業としても磨き、それをどう合流させていくのか。本格的にプラットフォームチームの構想にのっとって複数のサービスが合流していく時に、個別で達成しなければならない短期の目線と、連携することを念頭に置いた中長期の目線を両方持って、全てのサービスの足並みを揃えるのは大変なことになると思います。
一方で、これを乗り越えればオーナーさんがとても便利に STORES プラットフォーム を使えるようになります。その未来を見据えたありがたい悩みでもありますね。
──この連携が進むと、オーナーさんにとってはどんなメリットがあるのでしょうか?
STORES のIDをひとつ取ってしまえば、予約も、決済も、レジも、ネットショップも全部使うことができるようになります。ゆくゆくはすべてのサービスをひとつの管理画面で見ることができ、顧客情報を一元管理できるようになるはず。いくつもの管理画面を行ったり来たりしなくてよくなります。また、一元管理されることで、オーナーさんは画面遷移といったユーザーエクスペリエンスが向上するだけでなく、オンラインとオフラインの垣根なく、また、どのサービスを入り口にしているかに関わらず、お客さんについて把握ができます。ユニクロやZARAといった、大手資本を持つ企業しか提供できていなかった体験を、あらゆるオーナーさんができるようになるのです。これはとてもインパクトのある話だと思っています。
──それは便利になりますね。オーナーさんの店舗を訪れたり、買い物をしたりするエンドユーザーにとっても、何か変化がありますか?
エンドユーザーにとっては、これまでのネットショップでの購入履歴や来店履歴などの情報をオーナーさん、つまりお店側が持ってくれているので、体験が向上すると思います。例えば来店予約を STORES 予約 で入れると、お店側に過去のネットショップでの購入履歴が見えたとする。すると、レジにその情報が出てくるのでお得なクーポンを出してもらえたり、ニーズをとらえた接客をしてもらうことができるんです。その他大勢と同じお客さまとしてではなく、ひとりの個人として認識された上でベストなオファーを出してもらえるんです。
STORES のこれから
──STORES の今後の展望を教えてください。
キャッシュレス決済も、ネットショップも、市場が確実に成長しています。僕自身、市場が成長している中に身を置いている凄さを実感しています。そのような流れに比べてネット予約はまだまだ浸透する余地がある中、それを凌駕するスピードで、STORES 予約も成長していくでしょう。
市場の成長と我々の頑張りがあるところまで加速したら、STORES に含まれる全てのサービスをより多くの方に使ってもらえる状況になるはず。プロダクトそれぞれは「絶対にいいじゃん!」と心底お勧めできるものなので、その時点にいかに早く到達するかだと思っています。
(写真・文:出川 光)