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「2030年 エンジニア女性採用比率 30%」実現に向けたトライ

こんにちは!STORES ダイバーシティプロジェクトで、プロジェクトリーダーを務める高橋 真寿美です。

STORES は2023年8月にダイバーシティ方針を掲げ、ダイバーシティ推進の最初の一歩として「2030年 女性管理職比率 40%」のコミットメント達成に向けた取り組みを行っています。方針の背景や想いについては、「マネジメント女性比率40%」。STORES が実現を目指す多様性とそれまでの道のりをぜひご覧ください。

ダイバーシティ方針では、コミットメントを実現するためのKPI・アクションプランを定めています。複数あるKPIのうち、私たちが最もチャレンジングであると考えているのが「2030年までに、エンジニア職における女性採用比率を30%以上にする」ことです。

この記事では、「2030年 エンジニア女性採用比率 30%」の実現に向けたトライをご紹介します!

注釈1)本記事における 女性/男性 表記について STORES は、全ての社員が属性に関わらず公平に働ける環境づくりを目指しています。統計的データは全て、人事管理上(戸籍上もしくは自己申告)の性別に基づいています。現状は「女性」「男性」となっておりますが、ノンバイナリー等を含む多様な性のあり方を尊重したいと考えています

注釈2)本施策の推進にあたっては、当社の雇用管理区分で女性従業員比率が4割を超えない役職・職種に限って、より積極的な情報提供など(いわゆるポジティブ・アクション)を行います。任用・採用の基準は男女とも共通の基準で運用しています

理想と現実の両面を見据えて決めた、チャレンジングな目標

「2030年 エンジニア女性採用比率 30%」は、理想と現状の両面を見据えて設定した目標です。

私たちがダイバーシティ方針を掲げる背景には、ミッションである「Just for Fun」があります。私たちの顧客である中小事業者さんは、性別をはじめとする属性・事業内容・価値観など、多様性に溢れる方々です。その多様な中小事業者さんの成長を支える私たち自身が多様であることは、良いプロダクト・サービスをつくる上で欠かせないことだと考えています。

多様性には様々な切り口がありますが、私たちはその中で、マネジメント層におけるジェンダーの偏りの解消を、最初に取り組む課題として決めました。STORES において影響の大きな観点であるにも関わらず、属性によるギャップが生じていることだからです。まずはこの課題に集中して向き合うことで、他の多様性の拡大にもつなげていきたいと思います。

こうした背景を踏まえた時に、理想はエンジニア含む各職種における女性比率が限りなく50%に近づいていくことです(女性・男性にとらわれない性自認の方もいるため、完全に50%になることはないとも思っています)。

一方で、現実として向き合わなくてはならないのは、テクノロジー業界における女性比率の少なさです。IT関連企業における女性従業員の割合は2023年時点で22.6%とのことです(参考:2023 年版 情報サービス産業 基本統計調査)。しかし、エンジニア職に限定すると、その数はさらに少なく、女性の割合は10〜20%程であると言われています。

STORES のエンジニア採用母集団における女性比率は約10%、選考通過率は男女で同程度です。そのため、私たちが女性エンジニア職の採用比率を高めようとする場合、女性エンジニアへの積極的な情報提供などにより、採用母集団の比率を変えていく必要があります。

こうした理想と現実を踏まえ、チャレンジングだが試行錯誤によって到達したい目標として「2030年 エンジニア女性採用比率 30%」を掲げることを決めました。

組織のなかでマイノリティの割合が3割となると組織全体の文化に影響があるそうです(参考:Kanter, R. M. (1977) Men and Women of the Corporation. Basic Books: New York.)。まずは「2030年 エンジニア女性採用比率 30%」を達成することで、より多様な力が生きる組織の土台を築きたいと考えています。

「技術に気軽にふれあう機会」への積極的な協賛を通じ、裾野を広げる

「2030年 エンジニア女性採用比率 30%」の達成は、STORES 一社で実現できることではありません。

STEM(科学・技術・工業・数学)分野におけるジェンダーギャップは、世界的にも問題視されていることですが、日本では特に顕著です。日本におけるSTEM分野の学位取得者における女性比率は17%であり、OECD加盟国の中でもワーストクラスです(参考:Share of women graduates in STEM fields)。こうした社会的な構造が変わらない限り、私たちのありたい組織にも近づくことができないと考えています。

まず取り組んだのは、「技術に気軽にふれあう機会」を創出するイベントへの積極的な協賛でした。

Rails Girls のスポンサー

Rails Girls Japanは、ジェンダーによって技術に触れる機会に不均衡が生まれている状況を改善するために活動している団体です。2012年から、日本各地で女性を対象にしたプログラミングイベントを開催しています。Ruby on Railsというプログラミング言語を使い、コーチの伴走を受けながらウェブアプリを作ることができます。

STORES はこうしたRails Girlsの取り組みに賛同し、2022年からスポンサーをしています。また、CTOの藤村は、その以前からコーチとして運営をサポートしています。

また、2024年3月1日-2日開催のRails Girls Tokyo 16thでは、STORES 技術広報のえんじぇるさん(@sweet_chiho)が、maimuさんと一緒にオーガナイザーを務めています。当日は、えんじぇるさんの呼びかけにより、STORES から5名のコーチと、4名のプログラミング初挑戦の女性社員が参加しました。

最後の集合写真。やりきった笑顔が素敵です

「技術に気軽にふれあう機会」の創出に対する手応えを感じたきっかけとなりました。

「女性向けイベントということで心理的参加ハードルが下がった」
「人生初デプロイ!!言えてうれしかった。終了後、クリエイティブコーディングにチャレンジしてみた」
(開催3ヶ月後)「プログラミングはほぼ初めてだったけれど、Rails Girlsに参加して最近無事にIT企業に転職できた」

参加後のブログや事務局に寄せられた声より抜粋

Waffle Festival のスポンサー

Waffle Festivalは、IT分野のジェンダーギャップの解消を目指す特定非営利活動法人Waffleが主催する、女子&ノンバイナリーの中高生・大学生を対象としたテック・カンファレンスです。

STORES からは、モバイルエンジニアのみっちゃん(@mimimi_engineer)が、『パソコン音痴な私がモバイル開発界隈でぬくぬく成長している理由』というテーマでお話ししました。

実は私、数学とパソコンが苦手なんです!そんな私が理系に進学し、今ではITベンチャー企業でAndroidエンジニアとして働いています。同じように、数学やパソコンが苦手だけどIT業界に興味があるな・・という学生さんもいらっしゃるのではないでしょうか?そのような方にこそモバイルエンジニアリングの界隈は特におすすめです!私の具体的なキャリアや日常の活動から、この業界の魅力をお伝えします。

Waffle Festival 2024 イベントタイムテーブルより抜粋
みっちゃんの登壇中の様子。等身大の話しに、会場からたくさんの質問がありました

Waffleさんのイベントに参加させていただき分かったことは、ジェンダーギャップがある業界であるが故に、それが原因となってさらに女性を遠ざけてしまっている現実があることです。

「普通のテックカンファレンスは、男性ばかりで参加しづらい」
「プログラミングがやりたくて情報系の学部に入学したが、男性ばかりの環境に辛くなり退学。女子大学の情報系学部に入り直した」

イベント会場で参加者と会話した内容より抜粋

活動を通してこうしたリアリティを知ることが、次の活動のヒントになります。

ライフスタイルや属性に関わらず、テクノロジーを学びたのしむことができる環境づくりに貢献する

次に取り組んだのは、ライフスタイルや属性に関わらず、テクノロジーを学びたのしむことができる環境づくりへの貢献でした。特に、子育て世代にスコープを当てています。

大前提として、子育ては女性・男性ともに関係するライフイベントです。多様なライフスタイルを支援することは、結果的に女性を含む多様な属性の人の働きやすさ・生きやすさにつながると考え、取り組みをスタートしました。

テックカンファレンスの託児スポンサー

テックカンファレンスは、一般的に1日〜3日程かけて行い、土日にかぶる形で開催されることも少なくありません。オンライン・オフライン・ハイブリッドなど、様々な開催形式があります。

テックカンファレンス × 子育て世代をめぐっては、以下のようなお悩みがありました。

「子どもがまだ小さく預け先がないので、カンファレンスイベントに参加するのが難しい」
「子どもがいるのでオンライン参加にしたけど、配信を集中して見ることができない」
「本当は夫婦でカンファレンスに参加したいが、子どもを留守番させることができないので、交互に参加している」

テックカンファレンス等で子育て世代の参加者と会話した内容より抜粋

STORES がテックカンファレンスの託児スポンサーに取り組み始める前にも、すでにテックカンファレンスにおける託児サービスの実績は多数存在していました。しかし、託児サポートの実施が断続的なことも多く、結果的に「テックカンファレンスに子どもを連れて参加できる」ことの認知が広まっていないのではないかという仮説を持ちました。

こうした状況を踏まえ、STORES が企業スポンサーとしてある程度継続的に支援を行うことには意味があるのではないかと考え、テックカンファレンスでの託児スポンサーを始めました。

これまで、STORES が託児を支援したテックカンファレンスは以下の通りです。

  • Kaigi on Rails 2023 (託児所運営企画)

  • RubyWorld Conference 2023 (ナーサリースポンサー)

  • Women Developers Summit 2023 (託児スポンサー)

  • RubyKaigi 2024(Nursery Sponsor)

支援方法は、STORES から託児所設置の提案をして企画〜運営まで行うもの、カンファレンス事務局が予定していたものに対して運営支援を行うもの、もともとあったスポンサーパッケージに協賛するもの、など様々です。

直近開催したRubyKaigi 2024では、開催地が沖縄だったこともあり、3日間で合計23名のお子さんをお預かりしました。企画・運営まで行ったことによって得られた運営ナレッジも多かったです。詳細はえんじぇるさん(@sweet_chiho)のプロダクトブログをご覧ください。

利用者の方からのうれしいお声もたくさんいただいています

「託児所のサポートのおかげで安心してセッションに集中することができました。子どもたちも楽しんでいる様子で、親としてもとても嬉しかったです」
「これまで沢山のカンファレンスを子育てと両立のため、あきらめてきました。核家族化が進み、コミュニティのなかで子育てが難しくなってきている現在で、本当に痒いところに手がとどく、松本さんが先日お話しされていたRubyのサービス精神にピッタリとマッチした試みだったと思います」
「一つ要望を上げると、子があまりにも楽しかったことからお友達とまた会いたいと言っており、託児サポートを利用した親たち含めて夕飯とか交流とかあったらRubyKaigiと子供の縁がその先に続いていってよかったのかなと思ったりしました」

RubyKaigi 2024 託児サポート利用者アンケートより抜粋

こうした託児サポートが、さまざまなテックカンファレンスや勉強会で当たり前になっていくと、「ライフスタイルや属性に関わらず、テクノロジーを学びたのしむことができる」世界に近づいていくのではないでしょうか。STORES としてもできる限りの支援を継続したいと思っていますし、託児サポートを検討しているテックカンファレンスや企業の皆さん向けのナレッジを積極的に公開していきます。

託児利用者向けノベルティとして配っている、ストまるシールブックも好評。詳しくは、初めて子ども向けのノベルティをデザインした話をご覧ください

STORES CAFE 

STORES CAFE は、STORES がテックカンファレンス後に開催しているミートアップです。子どもと安心してご参加いただけるように、ノンアルコールで実施をしています。

これまでに、2回開催しています。

  • STORES CAFE〜Kaigi on Rails 2023出張版〜

  • STORES CAFE at RubyKaigi 2024

いずれも満員御礼で、キャンセル待ちが発生してしまうことも。子どもと参加したい人だけではなく、「お酒の席が苦手だけど、ノンアルコールなら安心して参加できる」という人もおり、また一つ多様性の側面を発見しました。

STORES CAFE for Women

STORES CAFE for Women は、女性エンジニア向けランチ会です。女性としてコミュニティに参加しているRubyistの交流を目的として、RubyKaigi 2024のタイミングで全2日程で初開催しました。

きっかけは、RubyKaigi 2023に参加した時に、こんな声を聞いたことです。

「カンファレンスや職場に女性が少ない」
「同じ目線で話せるRubyistの友だちを作りたい」

テックカンファレンス等で女性エンジニアと会話した内容より抜粋

初めての試みだったのですが、2日程ともに満員。うれしい声もいただきました!

「アフターパーティーは勇気が出ないけど、STORES CAFE for Women には勇気を出して参加ボタンを押せました」
「女性エンジニアの方々と交流する機会をつくってくださって、とっても感謝です!」

SNSや事務局に寄せられた声より抜粋

社内のダイバーシティ推進の土台づくりも大切

こうしたトライを積み重ねていると、技術広報担当の方やダイバーシティ推進担当の方から、「STORES さんは、ダイバーシティ方針を出してからの動きが早い」などのコメントをいただくことも増えてきました(まだまだ道のりは長いのですが・・・)。

私たちがスピーディにトライを積み重ねることができているとすると、その背景には、経営チームのコミットメントの高さがあると思います。特に、CTO 藤村と、VPoE 佐藤(大介)は、ダイバーシティプロジェクトの立ち上げメンバーとして、初期からこのテーマにコミットメントしています。これからさらに取り組みを加速していくためには、テクノロジー部門をリードする2人の熱量を組織全体に広げ、オーナーシップを持ってこのテーマを考え、行動する人を増やすことが必要です。

STORES では、全管理職に対してダイバーシティワークショップを実施しています。その上で、テクノロジー部門ではメンバー向けのワークショップも開催しています。任意参加ですが、これまでで40名のエンジニアが参加しています(全エンジニアのうち約40%)。ワークショップでは、アンコンシャスバイアスに関する基礎的な知識のインプットや、社内の定量・定性情報を元にしたケースワークを行っています。

参加者からは、等身大のコメントがたくさん。

「改めて偏見に対して、向き合い方を考えるきっかけになりました。無くならないからこそ、考えていきたいと思います」
「これまで気づいていなかったことに気づくことが出来て良かったです。ただ一方で、マジョリティ性が高い属性を自分が持っていることもあり、まだまだ理解できていないことが多いとも思います」
「技術的なトピックなどであればコトに対する議論へと向けやすいのですが、今回のような議題だとアイデンティティにも関わるテーマな分、ある意見がその意見を言った人と結びつく感覚が強くありました。個人のこれまで培ってきた経験/環境などにも意見することになってしまわないか...?ということを考えてしまうと、なかなか率直に意見を交換できない瞬間が個人的にはありました。難しい...」

参加者アンケートより抜粋

難しいテーマですが、だからこそ対話を重ねながら考え続けていきます。

さいごに

「2030年 エンジニア女性採用比率 30%」の実現に向けたトライの、具体的な内容をご紹介してきました!

これまで約一年間取り組みを進めてきて思うことは、ありたい姿の実現に向けてはまだまだ距離があるということ。多様性というテーマだからこそ、活動を続ける中で出会う一人ひとりの言葉が大切な気づきとなり、次のトライに向けたヒントになっています。

STORES はこれからも多様な組織づくりに向けて、試行錯誤を続けていきます!

Just for Fun!

デザイン:中間 彩乃
文:高橋 真寿美

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