コミュニケーションを鍵に「誰かのきっかけになる」。STORES の人事として向き合う仕事と今
「これまでは、まだインタビューを受けられるタイミングじゃなかった気がして」と、2回目のオファーでやっと取材を受けてくれたのは STORES でリクルーターを務める小谷 毬乃さん。いつも元気でご機嫌で、Slackの投稿には賑やかなスタンプがたくさん。話を聞いてみると、このコミュニケーションには理由がありました。これまでのキャリアから未来のことまでお話をききました。
キャリアの軸は、自身が変わったきっかけから
──これまでのキャリアを教えてください。特に印象的なものはありますか?
大学卒業後、新卒でインターネットメディアを運営するベンチャーに入社しました。
その後、初めての転職で STORES へ入社しました。職種は一貫して人事領域を担当しています。
印象的だったのは、やはり新卒で入社した前職での経験です。また、大学時代に経験したアパレルショップの販売員のアルバイトは、将来を考える大きなきっかけになったので印象的です。
──ショップ店員をやられていたんですか!どんなお仕事だったのでしょう。
私がアルバイトをしていたのは、レディースブランドを中心にグローバル展開をしている会社の新業態のショップでした。表参道の旗艦店に配属となり、当時会社が手がけていた5~6種類のブランドを扱う販売員として仕事をしていました。
当時の私には、"おしゃれに関心と憧れがあったのに、全くおしゃれじゃない"という矛盾がありました。一言で言うとセンスが皆無でした(笑)。
雑誌を読むのは好きだけど、自分に似合うものがどんなものかも分からず、こだわりもない。理想と現実のギャップをすごく感じていたんです。
アルバイト先を変えようとしていたタイミングだったので、「今だ!」とファッション業界に飛び込んでみることにしました。せっかくなら有名ブランドで働こうと、Google検索の一番上に出てきたブランドに応募しました。
──ショップ店員の方がとても綺麗なことでも有名な会社ですよね。
そうなんです。書類審査後に面接に行ってみたら、みんなすごくスタイルがよくておしゃれで.......。自分が場違いに思えて帰りたくなりました。けれど、特技を紹介するタイミングで、強い気持ちを持ちモノマネを披露したところ「キャラクターが良い」と奇跡的に合格することができました(笑)。
はじめに任された仕事はお店のバックヤードで商品の仕分けをする作業。複数ブランドの新作が週2回大量に届くため、それらをブランド毎のストックに整理したり、ディスプレイ用にアイロンがけをしたりする仕事でした。
日々、たくさんのお洋服と触れる中で、トレンドの習得、ブランドコンセプトの理解、素材によるお洋服の質感の違いやデニムの種類や特徴など少しずつ知識が増えていきました。
数ヶ月後、接客をまかせてもらえるようになり、インプットした知識を接客を通してアウトプットしていきました。
お洋服を探しにくるお客様一人ひとりに違った目的や悩みがあり、それらを丁寧にヒアリングしながら商品の提案をする。その商品と出会い、お客様が笑顔になってくれる。その仕事にすごくやりがいを感じました。
結果的に、学生アルバイトながらポイントカードの新規会員獲得数を競うイベントなどで表彰をいただけるようになり、小さな成功体験になりました。
販売員のお仕事を通して、自信がつき、内向的な性格がいつの間にか外交的に変わっていました。また、自分なりのおしゃれも楽しめるようになり、「こうやって人は変われるのか」と気づいたのです。
そこから、「人の可能性を広げるきっかけを創る」が人生のテーマになりました。
さまざまな職場で身につけていったスキルや気づき
──その後、就職活動をされたんですよね。ファッション業界での就職は考えなかったのですか?
もちろん考えました。けれど、あらためて自分の将来と向き合った時、達成したいのは「人の可能性を広げるきっかけを創る」こと。
私はファッションがきっかけで変わったけれど、それはあくまで自分の話。何がきっかけになるかは人によって違いますし、販売員のお仕事は、目の前のお客様しか幸せにできない。
「より多くの人に」と考えたときに、インターネット業界に入れば、世界中の人に何らかの価値を届けられるのでは!と思ったのです。
当時、前職は美容・健康情報を発信するメディア事業を運営しており、悩みを解消することで一歩踏み出せる人を増やすというビジョンを持っていました。その価値観に共感して、新卒入社を決めました。
──もうひとつの印象的なキャリアに挙げてくださった前職の経験は、どのように印象的だったのでしょうか。
社会人としての基礎を学んだこと、そしてここで初めて人事の仕事に就いたことで印象に残っています。人事のお仕事は、「人の可能性を広げるきっかけを創る」という人生のテーマとリンクしていて、自分にぴったりな職種だということもわかりました。
また、はたらき方がハードな会社だったので、どんな事にもポジティブな意味づけをして、向き合い、乗り越えるスキルが身につきました。今の仕事にもすごく役立っています。
もともと、すごく心配性で緊張しがちな性格だったのですが、人事として人前に立つ機会も多く、「自分をどう見せるべきか」を考えて、人格を切り替えられるようにもなりました。
──もともとの性格や考えとは関係なく、相手のために自分を変えられるのはすごいことですね。
STORES に入社して間もない時、(佐俣)奈緒子さんから「テキストコミュニケーションが冷たい感じがしてもったいない」とフィードバックをいただいたことがありました。当時の私は大量採用を前に進めるので精一杯の時期。なるべくボールを落とさないように最短距離で進めようとするコミュニケーションが裏目に出ていたのです。
このフィードバックをいただいた時、数秒間は「頑張ってるのに、悲しいな」という気持ちがよぎりました。けれど、事実として誰かに冷たい印象を感じさせてしまっている。それならば改善すべきだと考えて、その日からテキストコミュニケーションも工夫するようになりました。
「みんながワークすれば、プロジェクトはうまくいく」。やりきった採用管理システムの移行プロジェクト
──STORES に入社されてからのお仕事で、難しかったものはありますか?
入社してからしばらくはいちプレイヤーとして与えられた個人目標を達成することにコミットしていましたが、最近は、チームで生産性高く成果を出していくことに関心があり、オペレーション改善周りのプロジェクトマネジメントを担う機会が増えました。
その中でも大変だったのは、採用管理システムの移行プロジェクトです。
大変だった理由は、既存システムの契約終了が迫っており時間的猶予がないにも関わらず、影響範囲がかなり広いこと。採用チームだけでなく、採用に関わる現場社員、そして STORES を志望してくださる候補者の方にも関わるシステムなので、UI/UXの観点やコスト面など慎重に検討する必要がありました。
──どのようにして移行先を決めたのでしょうか。
まずは、現状把握を丁寧に行った上で、決裁者を握りました。誰が首を縦に振れば良いのかを把握し、彼らが重視しているポイントとその背景をじっくりと確認しました。同時に、採用管理システムはセキュリティ観点の懸念払拭も重要なため、関係者に頭出しを行いました。
また、採用に関わってくれている現場メンバーの意見も可能な範囲でヒアリングをし、何がMUSTか、WANTか、を整理・すり合わせ、最終的な意思決定に賛同いただけるようコミュニケーションを取っていきました。
こうして他部署のメンバーからの意見を集めながらも、自チームのモチベーションを高めることも大切にしました。「なぜやるのか」「このプロジェクトが完了したらどんな未来が待っているのか」「どんな貢献を期待しているか」を伝え、とにかくフロントに立つ我々が楽しむことを大切にプロジェクトを進行しました。
定例では、「お気持ちシェア」というアジェンダを追加し、ロジックのない感覚的な意見にも耳を傾け、メンバーが発信しやすい環境をつくっていきました。
こんな風に少しずつ協力者を 増やしながら、システムの比較検討、スケジュール管理、オペレーション周りのルール改訂、移行作業、チームオンボーディングを4ヶ月ほどで行いました。短納期のなか、みんなのおかげでベストな意思決定ができたと感じています。
関わるみんなが同じ方向性を見て、全力を出せばプロジェクトはうまくいくという感覚をつかめた経験でもありました。
仕事の鍵はコミュニケーション
──ここでも、コミュニケーションの工夫がプロジェクトを前に進めてくれたんですね。
そうですね。ちょっとした配慮や工夫でお互いに気持ちよく仕事ができますし、物事が前に進むから、コミュニケーションの配慮は働く上で大切にしていることのひとつです。どれだけ仕事ができても、(一緒に仕事を)やりにくいと思われてしまったらもったいないなと思います。
なので、どんな仕事もご機嫌に頑張るスイッチを常に入れているんです。
──スイッチ、ということは、オフの時も?
もちろんあります(笑)。家では基本おふざけモードですし、よくポケーっとしています。
調子が悪く、仕事上のコミュニケーションに影響が出そうな時は、チームメンバーにこっそり伝えておくこともあります。「今日はかなり立て込んでいるので、いつもよりテキストコミュニケーションが雑になってしまうかもしれないです」って。
目の前の仕事を120パーセントで
──これからのキャリアで、どんなことを目指していますか?
実を言うと、今のところあまりイメージできていないんです。
そろそろキャリアの方向性を考えなければと思っているんですが、これまであまり意識しないようにしてきたこともあり、なかなか難しいなと。
新卒でファッション業界の仕事を選ばなかったのは、自分の可能性を狭めたくなかったから。社会に出る前の未熟な状態で将来の幅を狭めてしまうのを避けたかったんです。
けれど最近、マネジャーと話しながら「チームで結果を出すことに喜びを感じるタイプ」だと気づきました。個人で結果を出すよりも、チームで仕事をするのが好きみたいです。
今は、それが分かっただけでも十分かなと思っています。仕事を期待の120%でお戻しすることを繰り返すうちに、できることが増えていき、いつかふと顔を上げてみたら、挑戦したいことやキャリアの選択肢が目の前に広がっている。そんな日を楽しみに今は頑張るだけです。
(写真・文:出川 光)
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