お店の付加価値はどこから生まれる?
ポチっとしたその瞬間、付加価値が動き出す
朝コーヒーを飲みながら、スマホで商品を注文する。その商品が、帰宅する頃には家に届いている—。これって本当にすごいことですよね?こうした便利な日常に、現代の「付加価値の本質」が隠されているのではないでしょうか。
先日、「2040年 店舗の事業環境はどう変化するのか?」という記事を書きました。人件費の高騰に伴い、小売系の店舗では利益率を維持するのが難しくなる— そんな現実が見えてきました。特に多くの店員を必要とする業態では、この課題はとても深刻なものです。
これまでは、ビジネスの付加価値を「売上÷人件費」のようなシンプルな指標で測ってきました。でもこの計算式だけで、現代の多様化する「価値」を本当に捉えられているのでしょうか?今回は「アパレル店」と「飲食店」を例に、事業者が「人件費の増加を上回る売上増加=付加価値」を確保するために、どのような取り組みをしているのか、そこから「付加価値を出す」という概念自体が近年どう変わってきているのか、についても考察してみました。
付加価値を測る新しい指標の考え方
今後、人件費高騰が予測される中で「人件費を超える売上をどう生み出すか」は、事業者にとって大きな課題だと書きました。この課題をもっと具体的に考えるため、付加価値創出のメカニズムを「売上」と「人件費」の関係から見てみます。売上と人件費の関係は、次のような式で表すことができます。
この式から、お店は2つの方法で付加価値を高められることが分かります。1つ目は「お客さん一人当たりの売上を増やす方法」、2つ目は「店員一人が対応できるお客さんの数を増やす方法」です。実際のお店では、業態に応じてこれらの方法を使い分けていますので、それぞれのお店がどのような工夫をしているのか、アパレルと飲食店の実例を紹介していきます。
アパレルと飲食店の今、変わりゆく接客の形
アパレルの変化ー「誰から買うか」で心をつかむ時代
お気に入りのアパレルショップのスタッフがインスタグラムで投稿するコーディネート。「この組み合わせ、素敵だな」と思って保存しておいた投稿を見返しながら、実際に店舗で試着する—。そんな購買体験を、皆さんもどこかで経験したことがあるかもしれません。
アパレルでは、「お客さん一人当たりの売上」を改善しようとする施策が多いようです。例えば、実店舗の施策として「STAFF START」のようなサービスが注目されています。店舗スタッフがインフルエンサーとして活躍し、「何を買うか」よりも「誰から買うか」が重視される新しい購買体験が広がりを見せていて、スタッフ指名購入やコーディネート提案からのセット購入といった、新しいパターンが生まれています。
また、店舗スタッフがネットショップの運営も合わせて担当することで、お客さんは気に入っている店舗スタッフのおすすめコーディネートを、遠方にいても好きなタイミングで買うことができます。さらに、ネットショップがきっかけで気に入ったスタッフのいる店舗へ指名来店するといった循環も生まれています。
STAFF STARTでは、スタッフが関与した購入の一部が給与・賞与に反映されるため、店員一人当たり人件費は増加しますが、それ以上の売上増加をもたらしているため、全体としては付加価値を生み出していると言えます。(参考書籍:リアル店舗を救うのは誰か )
飲食店の変化ー気づけば当たり前に。 新しい注文スタイル
次に飲食店での注文方法に注目してみます。これも、ずいぶん変化していますよね?皆さんも、お店でタブレットを使って注文したり、スマホでオーダーを済ませたりした経験が、一度はあるのではないでしょうか。
「人手不足+売上単価が低め」な飲食業態では、「店員一人当たりの接客数」を増やすためにDXを活用した施策が鍵となってきます。例えば、ここ数年でよく見かけるようになったテーブルオーダーは最たる例です。店員が注文を取る時間を削減できるため、その削減した時間でより多くの他の接客業務をすることができ、その分「一人当たりの接客数」が増えることになります。
また、テイクアウト型モバイルオーダーでは注文時間だけでなく片付け時間まで削減できるため、「接客業務のうち、どの部分を削減してトータルとしての接客人数を増やすか」という方向でシステム化が進んできています。ここからわかる通り、飲食店では「オペレーション効率化をいかに行うか」が重要なテーマとなっており、人件費を減らしつつ、限られた人手を効率的に使うことで付加価値を生み出しています。
そもそも現代的に「付加価値を出す」とは?時間と場所からの解放が生む、新しい価値
ここまで、アパレルと飲食店を例に、それぞれの実店舗の施策を見てきました。そもそも「付加価値を出す」とはどういう事なのか、さらにその先にある「人件費増を上回る売上増加」をどう実現するのか?これを現代的な視点で考えてみました。
一般的に店舗でモノを購入するためには、
商品の注文と受け渡しが同時刻に行われること
商品受け渡し時に店員とお客さんが同じ場所にいること
つまり「時間と場所の一致」が必要でした。
ここで、アパレルで触れた「ネットショップ」について考えてみます。ネットショップでは、1. 商品の注文と受け渡しは同時刻でなくてよく、また、2. 商品受け渡し時に店員とお客さんが同じ場所にいる必要もないわけです。お客さんは遠方にいても商品を注文できますし、また、店員は店舗業務をやりつつ隙間時間でネットショップの注文に対応できるようになります。
次に、飲食店で触れたテイクアウト型モバイルオーダーについて考えてみます。テイクアウト型モバイルオーダーでは、商品の受け渡し時には店員とお客さんが同じ場所にいる必要がありますが、注文タイミングは自由です。そのため、お客さん側は注文の待ち時間を短縮することができますし、店員側は接客の工数を大幅に省くことができます。
こうして見ると、現代の「付加価値を生み出す」とは、お客さんと店員を時間と場所の制約から解放し、新しい体験や関係性を生み出すことにあります。これまでの接客では必須だった「時間と場所の一致」を、どのように・どの程度まで緩めるか。その工夫の方向性によって、次々と新しいサービスが生まれているのが今の状況だと言えます。
テクノロジーやソフトウェアの進化により、こうした制約が緩和され、店舗運営はこれまで以上に柔軟で自由になっています。STORES は、こだわりを持って商品やサービスを生み出しているお店を支えるため、この領域に全力で取り組んでいます!
最後に
今回も、普段の仕事を通して考えたことを少しご紹介しました。いつもの風景に、新しい「付加価値」が潜んでいるとしたら——ちょっとワクワクしませんか?付加価値の創出は「当たり前」に見える日常を、あと一歩進化させる事だと思います。
STORES では、「お店のできることを増やす」を目指して、お店の成長を全力でサポートしています。そして、その先にある「Just for Fun」な社会を実現するためにチャレンジし続けています。少しでも気になった方は、ぜひ採用サイトをチェックしてみてください!
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