
ありたい姿を実現するまでの基盤を作った1年。STORES のダイバーシティ推進の2024年を振り返って
STORES のダイバーシティ推進の現在地点をお伝えする、STORES ダイバーシティレポート2024を公開しました。2024年の STORES のダイバーシティ推進はどのような道のりを歩んだのでしょうか。成果と課題を振り返ります。
本記事は、STORES ダイバーシティレポート2024掲載のコラムの別編集版です。
スピーカー:
取締役 VP of People Experience 佐俣奈緒子
執行役員 COO 佐藤大介(以下、さとだい)2024年末までVPoE
PX部門HR本部 シニアマネジャー 高橋真寿美
2024年は横ばいとなった女性管理職比率。目標を掲げて取り組んだからこそ見える壁と兆し
高橋:ダイバーシティ推進に共に取り組んできた佐俣さん、さとだいさんと2024年の振り返りとこれからの展望についてお話ししたいと思います。まず、コミットメントである「2030年に女性管理職比率40%」の進捗について、どう振り返りますか?
佐俣: 女性管理職比率は、2024年1月20.3%、2025年1月20.4%と、横ばいの結果になりました。改めて実感したのは、キャリアを重ねて管理職に任用される時期が、ちょうどライフイベントと重なりやすいということです。 社員のみんながライフイベントと仕事を両立していることに感謝を感じる一方で、時間がかかる取り組みであるということを実感した1年でもありました。

高橋:長期的な取り組みになるからこそ、早く始めて良かったと思っています。よく、「スタートアップ “なのに” 積極的にダイバーシティ推進をしているんですね」という言葉を社外の方からいただくのですが、事業・組織の成長と変化が大きいスタートアップ “だから” 、今から取り組むことが、ありたい組織に近づくために必要なんだと思っています。
定量面では大きな変化がありませんでしたが、手応えを感じた瞬間も多くありました。例えば、数人の女性マネジャーから、シニアマネジャーを目指したいという声をもらったこと。ダイバーシティプロジェクトを立ち上げる前は、マネジャーの次のキャリアが見えないという声が多かったことを鑑みると、大きな変化だと感じます。
大きな成果が出た、新規採用者における女性比率の向上。社会の格差を引き継がないためのオファープロセスの見直しも
佐俣:また、新規採用者における女性比率が大きく向上したことは、2024年の大きな成果でした。エンジニア採用では21.4%(前年比+4.7pt)、エンジニア以外の職種では54.3%(前年比+22.5pt)になりました。
STORES の採用要件は男女共通で運用しており、主に変えたのは採用広報です。STORES がダイバーシティ推進をしていることを様々な方法で積極的に伝えた結果、採用候補者からの前向きな反応がありました。多様な力を生かすことに前向きな組織で働きたいと思っている人の多さを、実感しました。
高橋:STORES では、2025年1月時点で24.63%の男女間賃金格差が生じています。2023年12月時点の30.26%と比較して-5.62ptと縮小傾向にあり、これは採用活動や成長を踏まえた昇格によって高い等級の女性が増えたことによるものです。
一方で、まだまだ差は大きいのが実情です。2023年版ダイバーシティレポートで公開した通り、一部の職種と等級において人事制度では説明できない統計的に有意な年収差があります。その原因を紐解いてみると、中途採用メインの採用活動において、本人の希望年収や現年収を確認した上でオファー金額を決めているため、現年収に影響されて女性の賃金が低く提示されがちであるということがわかりました。
そこで、採用候補者の実力を STORES の等級に照らし合わせて提示年収の仮案を作り、現年収や希望年収はあくまで参考情報として仮案策定後に確認をするというプロセスに変更しました。変更の効果検証はこれからですが、バイアスがかかりづらい、より良い意思決定プロセスを追求していきます。
テクノロジー部門はプロセスを先行的に変更した組織の一つですが、プロセスを変えてみてどうでしたか?
さとだい:これは、データに基づいてインプットがあったからこそ始められた取り組みだと思います。STORES では選考通過率に男女の差はなく、採用母集団の男女比が入社者における男女比に反映されていることが分かっています。一方で、オファー金額決定のプロセスには一定の課題がありそうだということも分かっていた。こうした事実を踏まえ、実際にオファープロセスに関わるマネジャー陣も前向きに取り組んでくれました。
やり始めると、より純粋に採用候補者の実力や経験のみに基づいて判断することができるようになったと感じています。こうした変化を積み重ねることで、大きな結果に繋げていきたいです。

全エンジニアがワークショップを受講。社会的にも女性の少ない職種だからこそ、チーム一丸となって取り組む
高橋:プロセス面では、テクノロジー部門の新たな取り組みが多かった1年でした。さとだいさんはVPoEとして、CTO藤村 大介さんと共に、「エンジニア採用における女性比率の向上」に力を入れて取り組んできましたよね。2024年を振り返ってどのような感想を持っていますか?
さとだい:「なぜダイバーシティを推進するのか」やダイバーシティの基礎的な知識について、テクノロジー部門全員で共通認識を作ることができ、それによってダイバーシティ推進の土台ができた1年だと思います。
高橋:ダイバーシティワークショップは、STORES では全管理職が受講しています。テクノロジー部門はメンバーも含めて全社員が受講を必須とし、2024年時点で93.3%のエンジニアがワークショップを受講していますね。
さとだい:エンジニアは、社会的にもかなり女性の少ない職種です。背景には、STEM分野における女性比率の少なさもあります。そのため、KPIである「新規採用者における女性比率をエンジニア30%」の達成に向けて乗り越えるべき壁は大きいと捉えています。だからこそ、チームで一丸となって取り組める環境を早期につくりたかったんです。
実際に研修を行ってみると、大切なことだと感じてくれるメンバーが多く、安心しました。「オススメされていた入門書を週末に読んで勉強しようと思う」「目指している状態を実現することで、女性だけではなく男性もより活躍しやすい組織になると思う」という声もありました。
「これって上場のためにやるんですか?」と聞かれたこともありましたね。「私たちがチームとしてもっと強くなるためにやっているんだ」と伝え、理解してもらえたのではないかと思います。
初の自社開催テックカンファレンスでは、登壇者の女性比率30%に
佐俣:ダイバーシティプロジェクトのリーダーとして取り組みをリードしてきた高橋さんはどうでしたか? 新たに気づいたことや、意識の変化などはあったのでしょうか。
高橋:これは新たに気づいたというよりも、改めて実感していることなのですが、対話が本当に大切なテーマであるということです。
これまで、ダイバーシティワークショップを約200人の STORES メンバーに対して実施してきました。また、多様性を持つメンバー同士の相互理解の機会をつくりたいと、相談してきてくれたマネジャーもいました。そうした場で話してくれる等身大の意見や疑問によって、自分自身の考えも日々アップデートされていると感じます。
特に、テクノロジー部門のメンバーの前向きな姿勢が嬉しかったです。2024年からプログラミングのたのしさを共有する技術体験プログラム「STORES Tech Girls Camp」を開催しているのですが、レクチャー担当の2人をはじめ、サポートをしてくれるエンジニアも、とても前向きに取り組んでくれました。
さとだい:STORES 初のテックカンファレンス「STORES Tech Conf 2024 "New Engineering"」の登壇者の女性比率を30%を実現したのも大きなトピックです。
高橋:一般的なテックカンファレンスの登壇者の女性比率は5%程度だといいます。男性ばかりが登壇するのが当たり前になると「エンジニアとして活躍して登壇するのは男性」という固定観念につながってしまいます。
STORES らしい多様な登壇を実現するためにはより多くの人がプロポーザルを提出することが重要であると考え、提出促進の取り組みを行い、95%のプロポーザル提出率を達成しました。

さとだい:結果的に、発表トピックの幅が広がりました。自分ではなかなか出せないトピックに「こんな観点があるんだ」と驚くと同時に、多様性がもたらす豊かさを実感することができました。また、これは開催後に分かったことですが、社外からの参加者のうち23.3%が女性※1でした。これは一般的なテックカンファレンスと比較すると高い比率だと思います。他にも、多様なスキル・価値観を持つ方々にイベントに参加いただき、前向きなコメントをいただき、STORES の目指す未来をお届けすることができたのではないかと思います。
※1:参加者向けの任意回答アンケートより算出
佐俣:日本でも、2020年頃からイベント登壇者のジェンダーバランスの問題について話題にあがることが増えてきました。登壇者や参加者の属性が30%変わると、場そのものも変わっていきます。こうした取り組みは、今後も積極的にやっていきたいです。
本質的な取り組みで成果を出しつつ、次のテーマにも目を向ける2025年に
高橋:ここからは、未来に目を向けて話をしてみましょう。2025年はどんなことにチャレンジしたいですか?
さとだい:やはり来年は数字で結果を出したいです。2024年は、このテーマに本格的に取り組み始めた元年で、まだまだ慎重に取り組んでいる面が多かったと感じます。もっと早く、もっとラディカルなことを行なっても良いのではないかと感じています。特にエンジニアにおける女性採用比率を上げるには、人材を育てるところから取り組む必要があると感じています。ただ比率を是正しようとするのではなく、社会のエンジニアの女性比率そのものを上げるくらいの気概を持ってこのテーマに取り組んでいきたいと思います。
佐俣:大きな変化を恐れないのが大事ですね。私は、ジェンダー以外の次のテーマにも取り組んでいきたいと思います。例えば今の STORES では、セクシュアルマイノリティの方や障害を持つ方への姿勢を組織として明確に示すことができていません。もちろん、全体的にポジティブな雰囲気があることは伝わっていると思いますが、組織としてのスタンスを明らかにしていないことで誰かの居心地を悪くしているかもしれない。まずジェンダーのテーマで結果を出したい。その結果を持って次のテーマに進みたいと思っています。
高橋:いいですね。2024年の取り組みで、ダイバーシティ推進に対する前向きな雰囲気や、結果を出すための土台は作れたはず。2025年は、私も含めた全員でもう一度固定観念を手放して、本質的な取り組みを通して前に進む1年にしたいですね。
写真・文:出川 光
\STORESのダイバーシティについてもっと知る/